第9話:札束の量
「リリシヤに協力するとは言ったが、こちらもいくつかの条件を出させてもらう」
リリシヤは驚いた顔をみせて腕を組んだ。
「人間が我に提案をしてくるとは、驚きじゃ。さあ、言ってみよ。その
俺は真剣に頷く。
「まず条件一は人間に干渉しないことでーー」
待て待て! とリリシヤは俺の話を遮った。
「人間が我らを攻撃してきた場合どうするのだ? 」
「その時は防御だけでなんとかする。攻撃をしなければ人間もこちらに敵意がないと錯覚するだろ? 」
リリシヤは納得した様子だった。
「それで、王国軍が油断した隙に我らが攻め入るということか……!お主、もしや頭がよいのでは? 」
俺はそんな言葉で地味に照れてしまった。
「そして二つ目、人探しをしてもらうこと」
リリシヤは胸を張ってこう言った。「我の力で人探しなんて簡単なことよ」
「なんなら、今すぐやってやろう」
リリシヤに名前を教えてほしいと頼まれたため、アンだと伝えた。
リリシヤは何か唱え始め、水晶玉のようなものがでてきた。水晶玉をのぞき込むと、アンが映っていた。
アンはお手伝いさんにお化粧をしてもらっていた。俺は何をしているのかわからず、首をかしげたが、途端にリリシヤが口を開いた。
「かわいそうに。まだ小さい小娘を、オークションに売り飛ばすとは」
俺はリリシヤの言葉でやっと理解した。「売り飛ばすって……なんでアンを」
「アンはどこにいたんだ?」
「多分ひとりで街をうろついていたんだと思う。」
「それが、原因だな…… 一人でいる女性を狙うことは、犯罪者として当たり前な事なのさ」
「じゃあ俺のせいで……」
「そうだ。お主は人間に対して信頼度が高すぎたんだ。お主の周りではやさしい人ばかりだったのかもしれない」
俺は黙り込む。俺のせいで、彼女が誘拐されてしまったという責任感に押しつぶされそうで……
リリシヤは俺の顔をじっと見ていた。
リリシヤは時間だと、これまでいた
門は小さく、人がギリギリ入れるような円のスペースとなっていた。
リリシヤにまた会おうと言われ、門は閉じた。
「アンは俺のせいで誘拐されてしまったのかもしれない。でも、今俺のやるべきことはアンの救出。
だからまず、オークションにいかなくては……」
*
...早速だが3時間無駄にした。
理由としては、オークションの場所がわからないという、大事件が発生したからだ。
俺はため息をつき、ただボーと天井を見上げていた。
魔法の勉強をすれば良い?
アンがオークションにかけられそうなのに、勉強なんてしている心の余裕は、すまないがない。
でも、行動してみないことに意味はない。俺はベッドから起き上がった。
すると、一瞬だが耳にピーンという高い音が鳴り響いた。耳を済ますと
「おーい、聞こえているか?これは念話。アンがオークションにかけられる場所をお前に伝えに
念話しにたんだけど……」
「三時間も待たせておいて……はいはい、聞こえてますよ」
「じゃあ早速場所を伝える。アンがオークションにかけられる場所は、お主が荷代から逃亡したところの裏路地だ」
「アンが掴まったのはもしや……」
「お主がいる荷代を追いかけて、そのまま掴まった。こう考えるのが普通だな」
「じゃあ、やっぱり……」
「そう落胆するではない!アンもお主が心配で追いかけて来てくれたんだ」
リリシヤは俺を励ますように、そう言ってくれたんだと思う。
「今日はもう寝るよ、おやすみ」
そう言って俺は布団の中へ入った。
*
アンを探してから3日目の朝だ。
俺は夢の中でアンと会った夢を見ていた。周りは白い部屋で、アンが笑顔で駆け寄ってくる。
アンが駆け寄ってくるほど、周りは暗くなり俺の足もとは段々と割れていった。そして俺はひび割れた地面に落ちていった。そのときに聞こえた声がまだ耳に残る。
「彼女は、今でも助けを求めている」という声が……
この声のお陰で、俺は彼女をいち早く、オークションから救出したいと決意した。
まず、服装などの準備をしたいと思った。今の服装はこの世界でみないような緑のパーカーだ。
前、ゴブリンたちに相談したのだが、緑は獲物から見つかりにくいため良い思いますと言われてしまい、服装を変えようという意識が薄れてしまった。
だが、オークションで目立つわけにはいかない。高貴な身分ばかりいるらしいため、執事やメイド以外は全員、正装服なのだそう。
そのため、レティシアさんに一時的借金としてお金を借りて、服の買い物をしてこようと思う。
俺はドアを開けた。メイドのリリエさんが近くに待機していると思っていたのだが、いないらしい。
ここは二階であるため、一階へと降りた。
するとレティシアさんがドアに耳を当てている。盗み聞きとは感心しないな……
俺はレティシアさんに静かに近寄り、小声で何をしているのかと聞く。
「レティシアさん、いま、何をしていらっしゃるのですか?」
「お父様が国王陛下の直属の騎士とお話をしているの。」
俺はしゃがんだ。
「なにについてですか?」
「それは……」
なにか言いづらいことなのだろうか。
「言いづらいのなら、大丈夫ですよ。」と俺は気をつかった。そして、本題の頼み事に入る。
「あの〜、レティシアさん……。お、お金を、お借りしてもよ、よろしいでしょうか、」
「何円分ですか?」とマジックバックから札束の山を取り出してきた。その札束の山を見た俺は固まった。
「足りないでしょうか?」と言い、レティシアさんはマジックバックから、この札束の山より一回り大きい札束を取り出してきた。
「もしかして、まだ足りないのですか?」俺は固まっていた。
「あ、も、もう結構です。」と何度も頭を下げて、俺は後ずさるのであった。
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