第9話:札束の量

「リリシヤに協力するとは言ったが、こちらもいくつかの条件を出させてもらう」

リリシヤは驚いた顔をみせて腕を組んだ。


「人間が我に提案をしてくるとは、驚きじゃ。さあ、言ってみよ。そのむねを!」


俺は真剣に頷く。

「まず条件一は人間に干渉しないことでーー」


待て待て! とリリシヤは俺の話を遮った。


「人間が我らを攻撃してきた場合どうするのだ? 」


「その時は防御だけでなんとかする。攻撃をしなければ人間もこちらに敵意がないと錯覚するだろ? 」

リリシヤは納得した様子だった。


「それで、王国軍が油断した隙に我らが攻め入るということか……!お主、もしや頭がよいのでは? 」

俺はそんな言葉で地味に照れてしまった。


「そして二つ目、人探しをしてもらうこと」

リリシヤは胸を張ってこう言った。「我の力で人探しなんて簡単なことよ」

「なんなら、今すぐやってやろう」


リリシヤに名前を教えてほしいと頼まれたため、アンだと伝えた。


リリシヤは何か唱え始め、水晶玉のようなものがでてきた。水晶玉をのぞき込むと、アンが映っていた。


アンはお手伝いさんにお化粧をしてもらっていた。俺は何をしているのかわからず、首をかしげたが、途端にリリシヤが口を開いた。


「かわいそうに。まだ小さい小娘を、オークションに売り飛ばすとは」


俺はリリシヤの言葉でやっと理解した。「売り飛ばすって……なんでアンを」

「アンはどこにいたんだ?」


「多分ひとりで街をうろついていたんだと思う。」

「それが、原因だな…… 一人でいる女性を狙うことは、犯罪者として当たり前な事なのさ」

「じゃあ俺のせいで……」


「そうだ。お主は人間に対して信頼度が高すぎたんだ。お主の周りではやさしい人ばかりだったのかもしれない」


俺は黙り込む。俺のせいで、彼女が誘拐されてしまったという責任感に押しつぶされそうで……

リリシヤは俺の顔をじっと見ていた。


リリシヤは時間だと、これまでいた世界現世につながる門を開いた。


門は小さく、人がギリギリ入れるような円のスペースとなっていた。

リリシヤにまた会おうと言われ、門は閉じた。


「アンは俺のせいで誘拐されてしまったのかもしれない。でも、今俺のやるべきことはアンの救出。

だからまず、オークションにいかなくては……」





...早速だが3時間無駄にした。

理由としては、オークションの場所がわからないという、大事件が発生したからだ。


俺はため息をつき、ただボーと天井を見上げていた。

魔法の勉強をすれば良い?


アンがオークションにかけられそうなのに、勉強なんてしている心の余裕は、すまないがない。

でも、行動してみないことに意味はない。俺はベッドから起き上がった。


すると、一瞬だが耳にピーンという高い音が鳴り響いた。耳を済ますと

「おーい、聞こえているか?これは念話。アンがオークションにかけられる場所をお前に伝えに

念話しにたんだけど……」


「三時間も待たせておいて……はいはい、聞こえてますよ」


「じゃあ早速場所を伝える。アンがオークションにかけられる場所は、お主が荷代から逃亡したところの裏路地だ」


「アンが掴まったのはもしや……」


「お主がいる荷代を追いかけて、そのまま掴まった。こう考えるのが普通だな」

「じゃあ、やっぱり……」


「そう落胆するではない!アンもお主が心配で追いかけて来てくれたんだ」


リリシヤは俺を励ますように、そう言ってくれたんだと思う。

「今日はもう寝るよ、おやすみ」


そう言って俺は布団の中へ入った。





アンを探してから3日目の朝だ。


俺は夢の中でアンと会った夢を見ていた。周りは白い部屋で、アンが笑顔で駆け寄ってくる。


アンが駆け寄ってくるほど、周りは暗くなり俺の足もとは段々と割れていった。そして俺はひび割れた地面に落ちていった。そのときに聞こえた声がまだ耳に残る。


「彼女は、今でも助けを求めている」という声が……

この声のお陰で、俺は彼女をいち早く、オークションから救出したいと決意した。


まず、服装などの準備をしたいと思った。今の服装はこの世界でみないような緑のパーカーだ。


前、ゴブリンたちに相談したのだが、緑は獲物から見つかりにくいため良い思いますと言われてしまい、服装を変えようという意識が薄れてしまった。


だが、オークションで目立つわけにはいかない。高貴な身分ばかりいるらしいため、執事やメイド以外は全員、正装服なのだそう。


そのため、レティシアさんに一時的借金としてお金を借りて、服の買い物をしてこようと思う。


俺はドアを開けた。メイドのリリエさんが近くに待機していると思っていたのだが、いないらしい。

ここは二階であるため、一階へと降りた。


するとレティシアさんがドアに耳を当てている。盗み聞きとは感心しないな……

俺はレティシアさんに静かに近寄り、小声で何をしているのかと聞く。


「レティシアさん、いま、何をしていらっしゃるのですか?」

「お父様が国王陛下の直属の騎士とお話をしているの。」

俺はしゃがんだ。


「なにについてですか?」


「それは……」

なにか言いづらいことなのだろうか。


「言いづらいのなら、大丈夫ですよ。」と俺は気をつかった。そして、本題の頼み事に入る。


「あの〜、レティシアさん……。お、お金を、お借りしてもよ、よろしいでしょうか、」


「何円分ですか?」とマジックバックから札束の山を取り出してきた。その札束の山を見た俺は固まった。


「足りないでしょうか?」と言い、レティシアさんはマジックバックから、この札束の山より一回り大きい札束を取り出してきた。


「もしかして、まだ足りないのですか?」俺は固まっていた。


「あ、も、もう結構です。」と何度も頭を下げて、俺は後ずさるのであった。

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