サンちゃんと私

今晩葉ミチル

憧れのアイドル

 その光景はキラキラしていた。ずっと憧れていた。

 煌びやかに彩られたステージに、湧き上がる大歓声。

 ファンたちの視線を一心に集めるのは、元気よく歌って踊る美少女だ。かわいいフリルのついた白いブラウスに、華やかに広がるオレンジ色のスカートを身に着けている。

 ツヤのあるふんわりとした茶色いショートカットはほとんど乱れないのに、しなやかな手足はリズミカルに動く。

 誰もが夢見るアイドルだ。


 その名はサンフラワー、あだ名はサンちゃん。


 サンフラワーは、ひまわりという意味らしい。

 ときどき視線が合うだけで、心臓が飛び出そうになる。

 彼女が歌って踊るステージは、熱気に包まれていた。


 私、吉田明里よしだあかりは客席から必死に応援していた。


 ずれかけた眼鏡をそのままに、長い黒髪が乱れるのも構わずに、オレンジ色に光るペンライトを一生懸命に振っていた。

 サンちゃんは、いつも元気をくれる。こういう時くらい、元気を返したい。

 ミュージックのテンポが激しくなり、いよいよ終盤になる。

 サンちゃんの心地よい高音のロングトーンが響く。

 やがてミュージックとロングトーンが同時に終わり、サンちゃんが両手を広げて満面の笑顔を見せる。

 会場が大喝采に包まれた。

 今日もライブは大成功だった。

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