陽一は、研究室の机に向かってひたすらに書類と向き合っていた。長年かけて開発した新技術、そしてその技術が社会に与える影響を思い描くたびに、胸が高鳴った。今、彼が手にしているのは、まさに未来を切り開く鍵だった。その技術は、業界に革命をもたらす可能性を秘めていた。

「これで全てが変わる」と陽一は自分に言い聞かせるように呟いた。彼の開発した技術は、今までの製品よりも遥かに効率的で、環境にも配慮した画期的なものだった。業界全体が変わり、新しい時代が訪れるだろう。そう確信していた。

その日、陽一は長い準備を経て、ついに大手企業である「シンカ株式会社」に提案することを決めた。シンカは業界のトップを走る企業であり、その影響力は計り知れない。だが、それだけに、陽一が手掛けた技術を採用すれば、シンカは次の時代を先取りする存在となり、ますます強固な地位を確立することができるはずだった。

企業の本社ビルに到着した陽一は、緊張と興奮が入り混じった複雑な感情を抱えながら、受付を通過した。会議室に案内されると、陽一は他の社員たちと顔を合わせた。彼らの表情はどこか冷たい。上層部の人物がその場に現れると、陽一は深呼吸をして、プレゼンテーションを始めた。

「私の提案は、今後の市場において決定的なアドバンテージを提供するものです。この技術は、環境負荷を大幅に減らしながら、製品の生産性を向上させることができます。そして、コスト面でも大きな削減が可能です。これを採用すれば、シンカ株式会社は競合他社に圧倒的な差をつけ、業界全体をリードする存在になるでしょう。」

陽一は自信を込めて説明を続けた。だが、彼の言葉が会議室に響く中、企業側の上層部はどこか冷淡な表情を崩さなかった。陽一が熱を込めて語る内容に対して、反応は薄く、数分の沈黙が流れた。やがて、会議室の一人の男性が口を開いた。

「陽一さん、あなたの提案は確かに面白い。しかし、現時点で私たちの会社にはこれを導入するリスクを取る余裕はありません。私たちはすでに安定した経営基盤を持っており、今さら新しい技術に投資して変化を起こす必要はないと思います。」

その言葉に、陽一は驚きと共に失望を感じた。彼がどれだけ自信を持って提案したところで、企業のトップはまるで耳を貸さないかのように感じた。陽一は一瞬言葉を失ったが、すぐに冷静さを取り戻し、再び説得を試みる。

「確かにリスクはあります。しかし、この技術が成功すれば、今後の市場でシンカは競争優位を得ることができ、長期的に見れば大きな利益を生むことは間違いありません。リスクを取ることこそが、未来を切り開く鍵です！」

しかし、企業の幹部たちは彼の言葉を一切受け入れようとしなかった。会議は冷ややかな空気のまま進行し、最終的に陽一の提案は却下された。

陽一はその場で呆然とした。自分の技術が、こんなにも簡単に却下されるとは思ってもいなかった。企業側の反応は冷徹で、どんなに説得を試みても、全く心を動かすことはできなかった。

会議が終了した後、陽一は企業のビルを後にした。エレベーターで降りる間、彼の胸の中には怒りと無力感が交錯していた。彼の開発した技術が認められず、無視され、完全に切り捨てられた。それだけでなく、陽一はこの企業が市場での影響力を持つ中で、自分のアイデアを封じ込めたことに深い裏切りを感じていた。

その後、陽一はさらに数日間、企業からの連絡を待ったが、結局、再び声がかかることはなかった。彼が開発した技術は、そのまま日の目を見ないまま埋もれていった。

ところが、数ヶ月後、陽一は衝撃的な事実を知る。彼の技術とほぼ同じ内容の製品が、別の企業から発売されていたのだ。そして、その企業はシンカ株式会社と提携していた。この事実に陽一は怒りがこみ上げ、同時に深い失望を感じた。

陽一はその瞬間、復讐を決意する。彼の技術を盗み、無視したシンカに対して、必ず報復を果たすと心に誓った。これはただの技術の争いではない。自らの誇りをかけた戦いの始まりだった。