大切な友達
ジャイキンマン
第一話 友人
ある冬の日の朝、体中痣だらけの青年が目を覚ました。
彼の名は「冴島秀圀(さえじまひでくに)」、国立利根川高等学校の2年生だ。
彼は親からの度重なる虐待により、体に消えない痣ができた。白く綺麗な肌にはどれも痛ましく、目を背けてしまうものだ。
秀國は高校進学と同時に両親と離れたから、虐待はここ二年はされていない。
そんな孤独な彼にも友人はいた。
「おーい!秀國ー!」
玄関の外から声がした。その声は彼の友人の「加藤清正(かとうきよまさ)」のものだった。
秀國は寝巻きで玄関の戸を開け、清正を迎え入れた。
「まだ寝てたのか?休日だからって寝過ぎだぞ」
清正の呆れた声に秀國は苦笑いで答えた。
「週に一回の休日ぐらい別にいいじゃねぇか」
寝起きでまとまっていない肩まで髪を掻きながらそう言った。
清正は家事のできない秀國の代わりに、秀國の家の家事全般を週末に手伝いに来ている。
「一人暮らしのくせに、家事ができないのは致命的だぞ」
清正はそんな言葉を吐きながら家に上がった。
「朝飯、まだだよな?」
「あぁ、さっき起きたばっかだからな」
清正はそれを聞くと台所に立った。食パンにチーズとチーズを乗せた後に塩胡椒をかけてオーブンに入れた。
チーン!と焼けたことを知らせる音が鳴った時にそこには、美味しそうなトーストができていた。
「ほら食え、温かいうちに食わねぇと不味くなるぞ」
「そうだな。ありがとう」
秀國がトーストを食べているうちに清正は洗濯機を回し始めた。
「美味しかった。ご馳走様」
「おう!早く皿下げて風呂に入れよ」
「わかった。いつもありがとな」
「何を今更」
秀國は寝巻きを脱いで、風呂に入った。背中まである痣は、どんなに時間が経っても無くならず、秀國のトラウマを表すように残り続けていた。
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