葛藤しました
久しぶりに街へ出ました。
駅ビルのエスカレーターを下りたところにサングラスをかけた男のひとが待ち構えていました。
坊主頭で、胸に黒いどくろが描かれている赤いタンクトップを着ていらっしゃる。
たくましい両肩から腕にかけては派手なタトゥーがほどこされています。
何かを配っているようだけれど、本能的に受け取りたくない……
しかしエスカレーターに乗ってしまっているので後戻りはできません。
私がエスカレーターに運ばれて前まで来ると、そのひとは意外な甲高い声と低姿勢で「よろしくお願いしまあす」と言って小冊子を差し出しました。
受け取ってしまった気弱な私。
そのひとは「ありがとうございましたあ」と言って足取り軽く去って行かれました。
私に渡したのが最後の一冊だったようです。
見ると表紙には「女性限定情報誌」と書かれています。
ファッション雑誌かなと思って開いてみると、バーやクラブや風俗関係の求人情報誌でした。
世の中にこういうものがあるということを初めて知りました。
こういう仕事をしているひとはどれぐらいの収入を得ているのだろう。
これは小説の資料になるかも知れないと思ったのですが。
道端に立って見ているのも憚られ、うちに帰るまで抱えて歩く気持ちにもなれず。
その雑誌はすぐにごみ箱に捨ててしまいました……
資料を持ち帰る勇気がなかった私。
雑誌をリサイクルに出さなかった、エコじゃない私。
いろいろともったいない気分になった、いろんな意味で弱い私なのでした。
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