第17話

――

――――……



三月に入り、日本列島は寒波に襲われた。


廊下は冬に逆戻りしてしまったみたいに冷たく、裏庭に咲く花開いたばかりの桃の花は後悔しているみたいに見える。


重たい灰色の雲が空をびっしりと覆い尽くしていた。



天気予報では、一週間後の卒業式は雪予報だ。


桜吹雪の卒業式を期待していた私は、いつもより早い開花宣言を楽しみにしていた。

けれどそれはもう叶いそうもない。


桜はまだ、固く蕾を結んでる。



高校の裏庭には大きな桜の木が一本植えられている。


その樹の下で入学式の日にりっくんと二人で花見をした。

“花見”と言っても、休憩時間にパックのジュースを飲んだだけだ。


新しい環境が少しだけ苦手で、すぐにお腹が痛くなる私を知っているりっくんが私を連れ出してくれたんだ。



私はこの学校の桜を、もう一度りっくんと二人で見たかった。

そうすればもう一度、りっくんとの距離が縮まる様な気がして……

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