第35話

「お前はなぁ・・・。本当に男を見る目無いよな。」



「・・・。」




その言葉を、あたしは否定できない。



事実だと思う。




けど、そんな見極めをどこかで教えてもらった事なんか無い。






「八方美人で男転がしてそうなのにな。」



「そんな事、した事無い・・・。」



「知ってるよ。」




誰かに、愛されたいと思うのに。


必要とされたいと思うのに。




その為に努力して。


綺麗にして。


笑顔でいて。


相手に合わせて。





結果、確かに必要だと言われても、それはいつだって"あたしだけ"じゃない。





あたしは、きっと便利なんだ。



会社にとっても。

男にとっても。



便利だけど、不可欠じゃない。






あたしは、和泉みたいに会社から必要とされるたった一人にはなれないし。





仲良くマンションに二人で入って行ったあの子の様に、彼から必要とされるたった一人にもなれない・・・。

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