2
―――玄関のドアが開く音がすると、人の
「ちょっとだけ寝かせてよ。2時間したら起こして」
「や、やだ! 待って。こっち。ここに座ってよ。だって、昨日会えなかったし。
「えぇー、少しはおれを休ませろよぉ。あ、もしかして……男連れ込んでないだろうな?」
ばたばたと二人分の足音がしてベッドの近くで止まる。
「いない、いないってば! ヨシくん変なこと言わないでよ」
「あれ? アンリももしかして朝まで飲んでた? 男いなかっただろうな? 相変わらず
「それはいいじゃん。ヨシくんだって好きでしょ? 昨日はずっとヨシくん待ってたからこれ着てるんだよ」
布団の中に
「あ……だめ、今はだめ。 ……そうじゃなくて、ちょっと、その……本当にだめなの」
二人の
「何だよ、いいじゃん。かまって欲しいっていったのそっちだし」
暑さで頭が
「だめ、恥ずかしい。その……ふ、布団が見てる」
布団? こっちに注意を向けさせるようなことを口走るなんてどういうつもりだ。
「ふっ……何それ、かわいこぶって―――」
俺は布団を持ち上げて両手いっぱいに広げると、声の方角に投げ飛ばした。
「おわっ!! 何だ? ちょ……オイ!」
「きゃあっ……」
そのまま布団で二人をまとめて包んで、横に引き倒す。布団から出た二人の足がばたばたと
「アンリ、昨日は楽しかった。じゃあな」
そう声を掛けると、靴を持ったまま
「彬……?」
聞きなれた声にぎょっとした。ゆっくりと振り返る。
「
布団を飛び出して引いた
「どうしてこんな朝早くにこんなとこ居るの?」
佐那が目を丸くして俺を見る。これからどこかへ出かけるのか、きちっとメイクをしている。そもそも佐那は夜遊びするタイプではない。
「いや、昨日先輩と飲んでて……その、色々あって……佐那こそ、どうして?」
佐那は少し唇を
「もっと正直に言った方が良いんじゃない? 色々って何?」
佐那の真剣な
「ごめん! ……先輩と女の子と飲んでて。
彼女の瞳を真直ぐに見つめて弁明する。佐那は黙って俺の瞳を見返している。
「いや、その、ちょっと……出来心は湧いたけど、けど本当に何もしてない」
佐那は口元を緩めてふっと笑う。
「分かった。彬、
俺は
「佐那は、どうしてここが分かったんだ?」
「何か、ここのとこ先輩とこそこそしてたから。先輩と飲みに行くって聞いて、ほんの出来心で……ごめんね……」
そう言って佐那はスカートのポケットから紛失防止タグを取り出す。俺は慌ててポケットからキーケースを取り出すと、そこには佐那の紛失防止タグがくっついていた。俺の扱いに関しては、佐那が天下無双。
了
出来心 山猫拳 @Yamaneco-Ken
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