…ふふ、ダンジョンってのは地下にあるもんだけどねぇ……読んでみたら、私のハートに一番深く潜ってきたのは、まさかのサラリーマンのリアルな絶望感だったわ。
この作品――一言で言うと、「ファンタジー(現実味120%)」なのよ。
まず主人公くん。この男、引越し業者でトラック運転手なんだけど、その暮らしっぷりがまぁ泣けるのよ。朝から晩まで働いて、稼ぎは雀の涙。肩も腰もゴリゴリで、もういつ潰れてもおかしくない。でもね、それでも彼はちゃんと今日を生きてるの。ぐだぐだ言いながらも、ちゃんと働いて、社会の歯車のひとつとして「それなり」にやってる。
……なのに、だ。
いきなり世界にダンジョン出現。しかも「魔王」とか名乗る奴が現れて、社会はパニック。政府は右往左往、経済は大混乱、世間は「このままじゃ人類滅ぶんじゃない?」って空気。でも朔斗はさ、「は? いやこちとら今週のシフトのほうが気になるんですけど?」みたいなテンションなの。
わかる。
すっごくわかる。
私だって昔、シュクレと一緒に「焼豚ワールド」からサンドイッチ帝国に出稼ぎに行ったとき、ちょうど食材価格が高騰しててね。ロースの悲鳴、聞こえたわよ。なのに国は「健康意識向上」だの「塩分控えめ推進」だのって…おっと話がそれたわね。
でね、朔斗くん。最初はダンジョンにも魔王にもまったく関わる気ゼロなのに、あるきっかけで「ダンジョンで稼ぐ」って方向にシフトするの。ここからがもうめちゃくちゃ面白い!
世の中が「魔王を倒せー!」「世界を救えー!」って浮かれてる中で、彼のモチベは超・現実的。
「いい部屋に引っ越してぇ」
「美味いメシ食いてぇ」
「腰に優しいベッドで寝たい」
最高すぎる。
それでこそ庶民!それでこそリアル!
でもね、主人公くん、ただの庶民ってだけじゃないの。彼、なんというか「気付いてない策士」なのよ。観察眼もあるし、空気読むのも上手い。でもそれを「戦略」として使ってるわけじゃなくて、もう染みついた生存本能。だからこそ、ダンジョンでもその“人間力”が火を噴くのよ。
しかも、この作品、登場人物がいちいち魅力的なの。異世界にありがちなテンプレキャラじゃなくて、それぞれに傷があって、夢があって、何かを諦めてたり、何かにしがみついてたり。
ダンジョンで出会う仲間たちもクセが強い。とくに“あの子”ね。ふふ、言わないわよ、ネタバレになるから。でも私は読んでて思わず「こりゃあバラエティ番組に出したらレギュラーよ」って唸ったわ。
それにね、「魔王」って存在。普通だったらただの悪役じゃない?でもこの作品じゃ、そいつがとんでもなく深い。宣言の文面ひとつとっても、皮肉たっぷりで、意味深で、どこかユーモアすらある。誰よ、魔王に哲学持たせたの。最高か。
あと地味に感動したのが、国や企業、メディアのリアル描写。政府の対応がチグハグだったり、便乗ビジネスが始まったり、SNSで「魔王かわいい」とか言い出すバカが出てきたり。これよ、これが現代日本よ。こういう細部があるから、物語がただのフィクションじゃなくなるのよ。
彼の選ぶ「現実的な夢」と、そのために踏み込む「非現実的な世界」。そのギャップがたまらないの。
最終的に私はね、「この作品、塩分高めで最高」って思ったわけ。甘さだけじゃない、辛さ、渋さ、汗臭さ、生活臭、全部詰まってる。
読んだ後、ふと冷蔵庫開けて、賞味期限切れのカリカリベーコン見つけてこう思ったの。
「あたしも、もうちょっと頑張ってみようかな」ってね。
…さ、次のダンジョン(=月末の支払い)に挑むとしますかね。
🧂一言でまとめるなら
「庶民魂で世界の裏をかけ!」
読者諸君も、ぜひまおかせのダンジョンへどうぞ。
装備は、夢と現実と、ほんのりの勇気よ。
──以上、レーヌハム・ド・ソルティがお届けしましたわ💋