第4話 見えないカフェイン
夜のカフェは、昼間とは少し違う雰囲気をまとっていた。照明は柔らかく落とされ、ジャズの静かなメロディが心地よく響いている。
カウンター席に座る莉奈は、小さく息を吐いた。「やっと落ち着いた……。」
仕事帰りの余韻が残る身体を伸ばしながら、タクミに向かって微笑む。「ねえ、今日はデカフェにしようかな。」
タクミは頷きながら、慣れた手つきでコーヒー豆を取り出す。「珍しいね。いつもはカプチーノなのに。」
「夜だからね。カフェインを取ると眠れなくなりそうで。」
「なるほどね。」タクミは微笑みながら、豆をグラインダーにセットした。
蒸気の音が静かに響く中、莉奈はふと疑問を口にした。「ねえ、デカフェって、カフェインを完全に抜くのって難しいの?」
タクミは一瞬手を止め、莉奈を見てからゆっくり頷いた。「うん。実は、デカフェでも完全にゼロになるわけじゃないんだ。」
「え、そうなの?」莉奈は少し驚いた表情を見せる。「てっきり、カフェインなしのコーヒーだと思ってた。」
「そう思うよね。でも実際には、約90%以上は取り除かれているけど、微量のカフェインは残ってるんだ。」
「へぇ……。それって、どれくらい?」
「普通のコーヒーに比べたら、ごくわずか。例えば、一杯のデカフェには、大体2~5mgくらいのカフェインが残ってる。でも、普通のコーヒーは一杯で80~100mgだから、ほとんど気にしなくていいレベルだよ。」
「なるほど……。それなら安心して夜も飲めるね。」莉奈はデカフェの香りを楽しみながら、ゆっくりカップを持ち上げた。
「うん。コーヒーを楽しみながら、ちゃんと眠れるよ。」
タクミは優しく微笑みながら、カウンター越しにカップを差し出した。莉奈はそれを受け取り、一口含む。
カフェインの刺激を気にしなくていいせいか、いつもよりまろやかで優しい味がする気がした。
カフェの外では、街灯が静かに灯り、夜の静けさが広がっている。
莉奈はデカフェの温かさに包まれながら、心地よい夜をゆっくりと味わった。
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