第4話 スイートルーム
部屋は約30平米。シティーホテルのシングルルームが17平米ほどだから、ほぼ倍の広さだ。さすが船のスイートルーム、ゆったりしたスペースが確保されている。私は内心、「これは予想以上に快適だ。旅費をケチらなくて良かったな」と満足感に浸っていた。窓から見える瀬戸内海の暗い水面が、照明に反射してキラキラ光っている。
「おじさん、すごかね。高級ホテルみたいやんね」とミキちゃんが目を丸くして言う。彼女の声には子供みたいな驚きが溢れていて、私はその純粋さに少し癒される。
「ミキちゃん、おじさんは止めよう」と私が言う。私は内心、「この呼び方、ちょっと距離感あるな。せっかく一緒の船に乗ったんだし、もう少し親しくしたい」と感じていた。
「だって、名前知らんもん」とミキちゃんが首を振る。
「私もミキちゃんの名前と苗字を知らないな。お互い名前も知らないで、船の同じ部屋に一泊しようってんだから、呆れるね、私たちは。私の名前は、宮部明彦だ。明彦でも宮部でもどっちでも呼んでいいよ」と自己紹介する。私はこういう時、ちゃんと線引きしつつもフレンドリーに振る舞うのが癖だ。
「うちの名前は、岡田美雪。美しい雪って書くっちゃん。小さい頃から名前ば略されて、ミキ、ミキって呼ばれよったっちゃん。じゃあね、二人だけん時は明彦、外に出たら宮部さんって呼ぶけね」とミキちゃんがニッコリする。彼女は内心、「明彦って呼ぶの、なんかドキドキするっちゃ。おじさんやなくて、もっと近か感じやね」と少しワクワクしていた。
「ミキちゃん、女性に年を聞くのもなんだけど、何才なの?」と私が聞く。
「ああ、そっか。年言いよらんやったね。二十三才よ。ちゃんと成人しとるけん、安心しとって」とミキちゃんが胸を張る。彼女の目は「どうや!大人やろ!」と主張してるみたいで、私は「この子、無邪気で可愛いな」と微笑ましくなる。
「私は1.5倍だ。三十五才だ。ミキちゃんの叔父さんぐらいな年だろうな」と答える。
「うちのパパは四十八才。ちょうどパパの弟、うちの叔父さんが三十七才。ほんまに叔父さんっちゃね!」とミキちゃんが笑う。彼女は内心、「明彦、叔父さんみたいやけど、もっとかっこええっちゃ」と少し照れていた。
「う~ん…」と私が唸ると、ミキちゃんが「おい、明彦、『う~ん』ち唸って何?何なん?ティーンやったら唸ってもよかばってん、もう二十三たい。ちゃんと成人しとる大人の女っちゃけん。それなりに扱うてもらわんと怒るばい!」とムッとする。私は内心、「この子、意外とプライド高いな。年齢差を気にしてるのは私の方なのに」と苦笑した。
「わかった、わかった。年齢は気にしないようにしよう」と私が折れる。私は壁際のデスクの引き出しを開けた。施設案内が入っていて、レストランは朝五時から入港前まで、大浴場は十時までと朝四時半から入港前まで開いている。時計を見ると、まだ間に合いそうだ。私は内心、「大浴場で疲れを癒したいな」と少し期待していた。
「ミキちゃん、この七階にある大浴場は十時まで開いてるってさ。外が見えるぞ。大浴場の外には露天風呂があって、星を眺めながらお風呂に入れるよ」と彼女に言う。すると、部屋を探検していたミキちゃんがバスルームを覗き込んで、「明彦、ちゃんと湯船があるばい。大浴場て混浴やなかとやろ?私、別々になるっちゃヤダたい。湯船にお湯ばはるけん、二人でお風呂入ろうや!」と目を輝かせる。彼女は内心、「明彦と一緒にお風呂やなんて、ドキドキするっちゃ。別々なんてつまらん!」とワクワクしていた。
「え?二人で…お風呂に…」と私が驚くと、「よかよか。そのおじさんの恥じらいっちゅうヤツは船外に放り出しとき!あ!そや!ママさんに連絡せんといかんたい」とミキちゃんがスマホを取り出す。私は内心、「この子、大胆すぎるだろ。恥じらいって…私がうぶみたいじゃないか」と少し焦った。
「あ!ママ?ミキたい。なんとか間に合ったばい。ギリッギリ。え?おるよ、ここに。スピーカーフォンに切り替えるけ、みんなで話せるやんね?」とミキちゃんが画面をタップする。彼女の行動はいつも勢いがあって、私は「止められないな」と観念しつつ笑った。
「宮部さん、ウチのミキがお世話になってます」とママの声が響く。彼女は内心、「ミキちゃん、このおじさんとなんとかやっとるみたいやね。ちょっと羨ましか」と少し嫉妬していた。
「いやいや、冷や汗ものですよ。ひと回り違う女の子と…」と私が返す。私は内心、「ママにまでこの状況説明するの、気まずいな」と少し汗をかいた。
「明彦、そげん話はよかっちゃ。ママ、乗船する前にセブンで買い物したったい。それで、明彦がATMで現金おろすっち言うけ、パパ活やなかけん現金なんかいらんっち言うたっちゃ。そしたら船ん中、クレカ使えんっちやん。勘違いしとったばい。それでね、レストラン閉まるけん、なんでも買いなさいっち言われて、お寿司とかおつまみとかスイーツとか買ったっちゃ。五分しか時間なかったけん、カゴん中にどんどん放り込んだばい。そげんそげん、0.01ミリも買うたっちゃ!明彦、ドギマギしよったもん。おじさんの恥じらいっち面白かねぇ!」とミキちゃんが一気にまくしたてる。彼女は内心、「ママに自慢したいっちゃ。明彦の反応、ほんと笑えるばい」と楽しそうだった。
「ミキちゃん、宮部さんを呼び捨てにして…」とママが言うと、「だって、二人でこう呼ぼうっち今さっき決めたっちゃ!了解取ったばい!二人のときは明彦、部屋ん外では宮部さんて呼ぶけんね、っち!」とミキちゃんが反論。私は内心、「この子、ほんと自由だな。でも、呼び捨てされるの嫌いじゃない」と少し嬉しかった。
「う~ん、まあ、いいか。それで、ちょっと、0.01ミリって?あれ?」とママが驚く。
「そうよ!岡本理研のあれよ!もしもの時には使うっちゃけん!」とミキちゃんが平然と言う。彼女は内心、「ママもびっくりしたやろ?うち、現実的やけん!」と得意げだった。
「ミキちゃん、そういうのって大胆…」とママが呆れる。
「明彦は恥じらっとるっちゃけどね。うちだって成人の女っちゃ。おんなじ部屋やけ、当然そういうこともあるっちゃ。明彦、お風呂に二人で入ろうっち言うたら、ギョッとした顔しとったもんね。うぶなオジサマやわ。本人は額ば叩いとるっちゃけど…」とミキちゃんが笑う。私は内心、「うぶって…私が照れてるだけなのに、この子にペース握られてるな」と少し悔しかった。
「宮部さん、この子、悪い子じゃないけれど、こういう成り行きでいいんでしょうか?」とママが私に聞く。彼女は内心、「このおじさん、ミキちゃんに振り回されとるけど、大丈夫やろか」と少し心配していた。
「ママさん、どうも押し切られてますよ」と私が返す。
「まったく、代われるなら私が代わりたいくらいよ」とママが冗談っぽく言う。彼女は内心、「私もスイートルームで遊びたかばい」と本音が漏れていた。
「ママさん、そういう刺激的なことを言われても…」と私が苦笑すると、「あ!ママ、この部屋、高級ホテルの部屋みたいやん!よかろう?四角い大きな窓から瀬戸内海が見えとるっちゃ!」とミキちゃんがスマホをビデオに切り替え、舷窓に近づける。彼女は内心、「ママに自慢してやるっちゃ。こんな素敵な部屋、初めてや!」と興奮していた。
私はテレビをつけ、船の現在位置と航路を示すチャンネルを出した。マップが映し出され、新門司港をノロノロ進んでいるのが分かる。私は内心、「この静かな動き、旅の始まりって感じだな」と少しロマンチックな気分になった。
「テレビに航路が出とるわ。まだ新門司港の中ばノロノロ動きよるっちゃけど、これから宇部市の沖合ば通って、山口県の沖合ば瀬戸内海通って進んでいくみたいやね。音もなかし、しずしずと動きよるわ。部屋の照明ば消して外ば見ると、ロマンチックやねえ。ビデオでママにも見せられるっちゃけど、どう?ママ、見える?素敵やろう?」とミキちゃんが言う。彼女は照明を消して窓に顔を近づけ、内心、「こんな綺麗な夜景、ママにも見せたいっちゃ」とワクワクしていた。
スマホからくぐもったママの声が聞こえる。「まあ、綺麗やねえ。悔しか~!私がそこにおりたかよ!」と少し拗ねた声。私は内心、「ママ、ほんと羨ましそうだな。この二人に挟まれると大変だ」と苦笑した。「ママ、そろそろ電波が…」とミキちゃんが言うと、港外に出たのか通話が切れる。
「あれ?切れちゃったばい。じゃあさ、明彦、お風呂入ってから、お寿司食べろうよ」とミキちゃんが提案する。
「おいおい、入るの?」と私が聞くと、「うん、入るの、一緒に」と彼女がクローゼットから室内着を取り出す。「あら、オシャレな部屋着やん。ほら、明彦」と私に渡してくる。私は内心、「この子、ほんと躊躇がないな。どうしよう」と少し動揺した。
ミキちゃんがベッドに腰掛けてグレーのウールのキャップを外す。長いサラサラの黒髪が肩に落ちて、私は内心、「この子、意外と綺麗だな」と一瞬見とれた。彼女はホットパンツを脱ぎ始め、ストッキングも脱ぎ出す。お~い、ショーツ見えてるよ。私は内心、「おいおい、急展開すぎるだろ」と目を逸らしたくなった。
「おいおい、ミキちゃん、ここで全裸になるつもりか?」と私が言うと、「明彦、違うっちゃ。こん狭か浴室で立ったまんま、ストッキング破らんごと脱ぐ方法が思いつかんけ、ここで脱ぐっちゃね」と長袖シャツも脱いでしまう。ブラとパンティー姿に。私は内心、「この子の自然体、どこまで本気なんだ」と呆れつつ、心臓がドキドキした。
「刺激が強い光景なんだけど…ショーツ、見えてるよ」と私が言うと、「見えたっちゃ減るもんやなかろうもん?それとも、うちの体、お気に召さんと?」とミキちゃんが首を傾げる。彼女は内心、「明彦、どう思うとやろ?うち、自信あるっちゃ」と少しドキドキしていた。
「いいや、好みのプロポーションだよ。胸も大きすぎず、小さすぎず、掌にすっぽり収まる好みのサイズだ…って、何を私は言っているんだ…」と私が慌てると、「うちの胸、ちょっと小さすぎん?」とミキちゃんがブラを引っ張って胸を見下ろす。彼女は内心、「明彦に褒められたっちゃ。嬉しいけど、ちょっと照れるね」と頬が熱くなった。
「そのくらいが良い。お尻も丁度いい」と私が言うと、「好みっちゃ好みなんね?そうなんね?」とミキちゃんがニヤッとする。
「うん、私のタイプの体だよ…って、いや、だからってね、そういう話じゃない!」と私が焦る。私は内心、「この子に調子を合わせすぎた。冷静になれ、私」と自分を戒めた。
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