天才作曲家?いや、ただの趣味です。
凰生 蕾
プロローグ
暗転した舞台に、静寂が満ちる。
次の瞬間、漆黒の闇を切り裂くように、一筋のスッポトライトがピアノの前に立つ女性を照らした。
彼女の指が鍵盤に触れた瞬間、柔らかな旋律が流れ出す。穏やかで、けれど芯のある音が、広いホールに響き渡る。
その音に重なるように、もう一つの光がヴァイオリンを抱えた男性を映し出す。
美琴の奏でるピアノに寄り添うように、透真のヴァイオリンが歌い始める。まるで会話をするような、溶け合う音。静寂を打ち破る音楽に、観客は息をのんだ。
幼い頃の僕・
彼にとって、両親が舞台に立つ姿を目の当たりにするのはこれが初めてだった。
家では何度も聞いてきた。しかし、こうして大勢の人々の前で、まるで魔法のように空間を支配する音楽を奏でる両親は、別世界の存在のようにすら思えた。
「.........すごい」
胸の奥が震えた。これが、本物の音楽なのかと。彼は、舞台袖で小さく呟いた。
けれど、彼の興味を引いたのは両親の演奏ではなかった。舞台の端、照明の向こう側、陰で彼らを支える人々。
舞台に立っているわけではないけれど、演奏者以外にもかかわっている人達が多く、このコンサートの為に汗水流して働いている、照明さんや音響さん、そして.........楽譜を持つ一人の作曲家さん。
奏は、そこで初めて気づいた。
(この人たちが音楽を作っているんだ)
両親のように演奏するだけではなく、音楽そのものを生み出すという仕事があることに。
―――――――――――――――――――
その日以来、奏はレッスンを受けながらも、舞台の裏側にいる人々の存在を気にするようになった。
特に作曲家という仕事に対する興味は日を追うごとに大きくなっていった。
(演奏するだけじゃない。曲を作ることも音楽なんだ)
しかし、両親には言い出せなかった。彼らは世界的な演奏家だ。音楽を奏でることに人生をかけている。そんな二人に「作る側になりたい」なんて言ったらどう思われるだろう?
両親は、僕を演奏家にしたくて何年もレッスンをしてきたはずだから、口が裂けても言えるわけがない。
だから奏は、密かに作曲を始めた
――――――――――――――――――――
それから数年後。
奏は自室にこもり、机に広げた五線譜にペンを走らせていた。ピアノの側には、いくつもの楽譜が積まれている。
中には、アーティストやアイドル用だと思われる楽譜もちらほらあったりする。
夜の静寂の中、彼は鍵盤にそっと指を置いた。
「.........こんな感じかな」
優しく、けれど芯のある音が紡がれる。手を止めて、楽譜を見直す。何度も何度も試行錯誤しながら、音を組み合わせていく。旋律が形になっていく過程が何よりも心地よかった。
演奏するよりも、こうして音を紡ぐことこそに彼は生きがいを感じるのだ。
やがて、作曲だけではなく、どのような編曲がより曲を引き立てているか、だれが演奏すればより輝くか、そんなことにも意識が向くようになった。
次第に、彼は"プロデュース"という分野にも興味を抱くようになっていく。
しかし、この”秘密”はいずれ暴かれることになる。
奏が13歳の時だった。
その日は、レッスン中にいいメロディが浮かんだから、忘れずに楽譜に起こしておこうと誰にも聴かれないように静かに作曲をしていた。
いつもは、夜中にこっそり作曲を行っていたため聴かれなかったが、その日は夕方にだった。
それがよくなかった.........。
不意に背後から声がした。
「奏?」
驚いて後ろに振り返ると、そこには母の美琴が立っていた。その視線は、奏が鍵盤に置いた手と、目の前の楽譜委向けられていた。
「今、弾いていた曲.....奏が作ったの?」
美琴の声は静かだったが、その奥には驚きがにじんでいた。
「.........うん」
隠し続けていた”秘密”がついに露見した瞬間だった。
その日を境に、奏の運命は大きく動き出していく――。
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読んでいただきありがとうございます。
初めての作品で拙いところも多いと思いますが、温かい目で読んでいただけると幸いです。
また、作者は学生のころから、国語の評価がずっと2なの文章の構成や矛盾等が発生する恐れがあります。
なので、皆様からのご指摘などございましたら気軽にコメントしていただければと思います。
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これからもよろしくお願いします!!
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