許嫁、現る④
「えっ、ちょっと待ってっ!じゃあ、何?私があの長身美男子と幼馴染で、そんでもってラブラブの許婚だったってこと?!」
「う~ん、“だった”じゃなくて“今も”だよ」
「……」
詠ちゃんが言うには親同士が昔から仲が良く、物心ついた頃から私と彼は許婚として仲良く育ったらしい。
私の父親は整形外科医、母親は内科医をしていて、十年ほど前から自宅でクリニックをしている。
彼の父親は極道の世界では知らない人はいないというくらい頂点に君臨するような組織、京極会 桐生組の組長らしく、彼はあの若さで若頭だという。
そして、強面の彼手嶋さんは、若頭を守る付き人(右腕)らしい。
極道の人が私立高校に入学して来たことも。
自分の両親が極道と知り合いなのも。
若頭である彼と許婚であることも理解し難いのに。
……ラブラブって、どういうこと?
「半年前に事故で怪我したでしょ、憶えてる?」
「……うん」
「あの時までは今私が言ったみたいに、小春と仁さんは超ラブラブだったの」
「……」
「事故で仁さんに関する記憶だけが失くなって、彼凄くショック受けてたよ」
両親から聞かされ、事故に遭ったことは知っている。
けれど、『記憶を失くした』とは聞いていない。
目覚めた時、私は病院のベッドの上で横になっていた。
額に包帯が巻かれ、腕にヒビが入っている程度で、数日で退院できたくらいだから大した事故じゃないと思っていたのに。
「仁さんは小春を庇って頭蓋骨にヒビが入ったり、肋骨も数本折れたし、全身打撲だったから事故後はすぐに会いに来れなかったんだよ」
私を庇って……?
事故の記憶も彼の記憶も、何一つ無い。
そう言えば何度も、『事故の時に一緒にいた人』に関して聞かれたっけ。
あれって、そういう意味だったんだ。
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