ひきこもりだった俺は探索者になり武器集めに目覚める

甲羅に籠る亀

第1話

 「ここが探索者協会か……。」


 見上げるほどに大きな建物をしている探索者協会を見上げていた俺だったが時間が迫って来ていた。


 「10分前だし、少し急がないと。」


 見上げるのをやめて探索者協会に向かって移動する。自動ドアで開いた扉を潜って探索者協会の中に入った。


 中も広いな。それに結構人もいるし。あの人たちも探索者になりに来た覚醒者なのかね?それにしても若い人以外にも居るんだな。


 探索者協会の中に入ってすぐにキョロキョロと辺りを見回しながら総合窓口の受付に移動する。


 総合受付の近くで探索者になる手続きをする受付の場所を探すと、すぐ近くに探索者加入受付はこちらと書かれた看板の受付を発見した。


 さっきは受付の前に人集りが居たせいで看板があるのが見えなかったんだな。今なら誰も並んで居ないし、すぐに手続きが出来そうだ。


 「おはようございます。探索者になる手続きですか?」


 「そうです。予約していた東海武人です。」


 身分証明書になる保険証と予約していた手続き書類と一緒に受付カウンターに鞄から取り出して置いた。


 受付の美人な女性は身分証明書と書類を確認すると番号札を取り出して受付に置く。


 「番号札の番号が呼ばれたら、この受付カウンターにお越しください。それとこれはパンフレットです。これからの予定が書かれていますので確認してください。」


 「分かりました。」


 9と書かれた番号の番号札とパンフレットを持って空いているソファに座って9番の番号が呼ばれるのを待つ事にした。


 それにしても他の受付の受付嬢も美人な人が多いよな。芸能人やモデルにでもなれそうな人ばかりだし。そういう人を優先的に選んで雇っているのかねぇ。


 ソファに座るまでの間にそんな事を考えながら移動してソファに座ると、先ほど貰ったパンフレットを開いて確認する。


 パンフレットにはこれから行なわれる探索者についての講習に関する内容が書かれていた。


 探索者に必要な情報やダンジョン内で禁止されている事にダンジョンでのマナー、他にも探索者に必要なアイテムはどんな物なのかなどだ。


 「なるほど。」


 講習でもやるんだろうけど、事前に知っておいて良かったかもな。それにしてもダンジョン内の争いに関しても書いてあるなんて。良くこんな内容を書いたもんだ。


 ダンジョン内での禁止事項の1つにダンジョンでのモンスターの横取りやモンスターを引き連れて逃げるトレインなどもあるが、その中でも探索者の殺害に関する内容もあった。


 ダンジョン内で犯罪目的の探索者に襲われた場合、襲ってきた探索者を返り討ちにして殺した時は探索者協会に起きた事を報告して探索者協会に正当防衛として認められれば問題はないのだそうだ。


 もちろん捕縛を推奨はしているが、それでも自分や仲間の命を優先する様にとパンフレットには書かれている。


 ダンジョンはモンスターだけでなく探索者にも警戒をしないといけない場所なのだと理解せざる終えない。


 これから俺もこんな環境で活動するんだな。それでも自分一人で考えて動けるだけいいか。誰かの指示で動くのは失敗しないかどうか心配で疲れるし。


 「番号札9番の方。手続きが終了しました。受付カウンターにお越しください。」


 「あ、呼ばれた。」


 3番の番号札を確認して俺の番が来たんだと立ち上がると受付カウンターに向かって移動する。


 「番号札9番の東海武人様ですね。手続きが終了しました。こちらの返却とこちらをどうぞ。」


 受付嬢の女性が身分証明書として出した保険証と一緒に金属製のカードを受付カウンターに置いた。


 保険証を取り出した財布に仕舞うと、一緒に置かれた金属のカードは何なのか質問する。なんとなく予想は付くが。


 「このカードはなんですか?」


 「そちらは仮の探索者カードです。これから10分後に行なわれる探索者講習後にダンジョンでスキルの取得をして貰います。その際に仮の探索者カードをダンジョンゲートの前にあるゲートを開くのに使用してください。ダンジョンでスキルの取得後に受付で返却後、正式に探索者カードをお渡しします。」


 「そうですか。分かりました。」


 パンフレットにも載っていた通りの様だ。それに改めて聞いたお陰でパンフレットを読んだ俺の認識と同じで安心もする。


 この後に講習が行なわれる部屋の場所を聞いた俺は講習の開始する時間もそれほどない事からすぐに移動した。


 既に部屋の中には俺以外にも8人いる。俺の番号札が9番だった。それに時間的に俺が最後の1人だと思われるし、今回の講習を受けるのは9人なのだろう。


 あそこが空いてるな。それにしても1人だけで来た人は俺を合わせて3人くらいか?


 空いている席に座りながら講習をこれから受けるのだろう人たちの様子を伺う。


 大学生だろう男女4人組。親しい間柄なのだろう女性2人組。残りは25歳である俺と同じくらいだろう女性と30後半はあるんじゃないかと言うおじさんだ。


 これから探索者になる事を楽しみにしていて騒いでいる大学生4人組の声が大きいなと思いながら待っていると、今回の探索者講習をするのだろう若い男性が入ってきた。


 「これから講習の担当をする桜井です。それでは講習を始めます。」


 桜井と名乗った男性の挨拶から始まった探索者講習はパンフレットに書かれた内容をより詳しくした様な話しがされていく。


 「話は以上です。それではこれからダンジョンに入ろうと思います。モンスターの危険は私が対処します。入るダンジョンも最低ランクのFランクのダンジョンで私がいるので危険性はありません。それでは出発しましょう。」


 講習の講師である桜井が動き出したのを合図に全員が動き出した。そうして探索者協会を出て少しした場所にあるFランクダンジョンのスケルトンダンジョンが見えてきた。


 「桜井です。講習の為に入ります。準備は出来ていますか?」


 「出来てますよ。貸す武器の入った箱を持って来ますね。」


 ダンジョンの前にある探索者協会の派出所でもあり、スタンピードが起きた際の砦でもあるダンジョンゲート前のゲートで武器を借りていく。


 「今回相手にするのはスケルトンです。ですので、使用するべき武器はメイスにしてください。」


 なるほどスケルトンは剣じゃ戦いにくい敵なんだな。覚えておこう。探索者になったら装備屋で買うなら打撃系武器にしないといけないし。


 ダンジョンゲートの管理をしている探索者協会の人が出した箱の中にあるメイスを取りに向かう。


 「あー、どれもおんなじだよ。」


 「どうせなら可愛いのとかあれば良かったのにー。」


 「誰も同じなら早く選べよ。」


 いち早く箱の前に移動していた大学生たちの声から思うに箱の中のメイスは量産品のメイスなのだと思う。


 最後尾に並んでいた俺の番がやって来た。


 「これにするか。」


 箱の中を覗いてみればどれも同じメイスだとすぐに分かり、1番近くに持ち手があったメイスを箱から引き抜いた。


 「全員メイスを取りましたね。これからダンジョンに入ります。ダンジョンに入る前はゲートに探索者カードをかざしてください。」


 1番先頭に講師の桜井がダンジョンゲートを簡易で塞いでいるゲートに探索者カードをかざしてゲートを開く。


 ゲートを抜けた桜井講師はそのままダンジョンゲートを潜ってダンジョンの中に入っていく姿が見えた。


 それに続く形で大学生メンバーが入り続々と講習を受けた人たちが入り俺の番になった。


 仮の探索者カードを使ってゲートにかざせばピッと言う音がしてゲートが開く。


 「これがダンジョンゲート。」


 ダンジョンゲートの形は様々あるが、ここのダンジョンゲートは青色で四角い形をしている。


 ダンジョンゲートの先には青一色で何も見えないが、ここを潜り抜けることで全く別の場所に移動するのだ。


 ダンジョンゲートを潜る際に不思議な感覚がするそうなのだが、それがどんな感覚なのか確かめる為にもダンジョンゲートを潜った。


 「こんな感じなんだ。」


 ダンジョンゲートを潜った感覚は確かに不思議な感覚としか言えない様な不思議な感覚だった。


 ダンジョンゲートの先は薄暗い部屋の中だ。壁には等間隔で設置されている蝋燭の灯りとダンジョンゲートから発生する光が部屋を照らしている中で桜井講師が話し始める。


 「最後の1人が来ましたね。それでは向かいます。この階層のスケルトンの動きは速くないので、最後尾の人や気が付いた人は後ろから接近して来たら教えてくださいね。それでは行きます。」


 桜井講師を先頭にして移動する。2メートル間隔で蝋燭の灯りだけが坑道を照らしている。


 坑道の中に移動する足音が聞こえる。そんな中で人以外の足音がコツンコツンと聞こえてきた。


 「スケルトンが来ますよ。私が捕えるので番号札1番の方がトドメをお願いします。」


 「わ、分かりました。ヒッ!?」


 番号札1番なのだろう女性が若干戸惑いながら答えていると、通路の先からこちらに向かって来る人骨が歩いて向かって来ていた。


 初めて生で目撃したモンスターの姿に短い悲鳴をあげる者や息を飲む者がいる中で、俺も初めて目撃したスケルトンに息を飲む。それに俺の番じゃないのにメイスを強く握ってしまう。


 「捕まえるからその後すぐにスケルトンの頭を砕いてね。何度も叩けば女性でも砕けるから。」


 「は、はい!」


 向かって来ているスケルトンに対して笑いながら桜井講師も向かっていく。スケルトンが両手を伸ばして桜井講師を捕まえようとして来た。


 危ない!!と声を出そうとした者もいる中で難なくスケルトンを桜井講師は捕縛する。その鮮やかな捕縛には慣れが感じ取れたほどだ。


 「さ、頭を叩くんだ。」


 「はい!えい!えい!えい!」


 掛け声と共に1番の女性がへっぴり腰でメイスを振るってスケルトンの頭蓋骨を叩いていく。


 段々とメイスを打ち付ける事でスケルトンの頭蓋骨にひび割れが起こり始める。


 「えい!やったー!」


 ひび割れが大きくなった次にメイスが振るわれた一撃でスケルトンの頭蓋骨は砕けると、桜井講師に捕まって抵抗していたスケルトンから力が失い動かなくなる。


 「倒したね。それでスキルは得られたかな?あ、得られたスキルは言わなくていいからね。」


 「はい!得られました!ありがとうございます!」


 スキルがちゃんと得られたのか1番の女性は嬉しそうにこちらに戻ってきた。


 それから順番に1人ずつ桜井講師の捕縛するスケルトンを倒してスキルを獲得する中でようやく俺の番がやって来た。


 「番号札9番の方、トドメをどうぞ。」


 「はい。」


 ジタバタと暴れているスケルトンは桜井講師に拘束されているからこそ、俺はスケルトンの頭蓋骨を狙って振りかぶったメイスを勢いそのままに振り下ろし、スケルトンの頭蓋骨にメイスは命中する。


 手のひらに振動が来て痺れる。その痺れる手を力をより込めることで、痺れで握力の落ちた手でメイスを手放さない様にしながらもう一度メイスを振り下ろす。


 2度目の振り下ろしでスケルトンの頭蓋骨に大きなヒビ割れが出来た。これならもう一度メイスの振り下ろしが命中すればスケルトンの頭蓋骨を砕くことが出来るだろうと確信する。


 これでトドメだ!!と心の中で叫びながらメイスをスケルトンの頭蓋骨に向かって振り下ろした。


 スケルトンの頭蓋骨が砕けてスケルトンの動きが無くなった瞬間に「スキルを取得しました。」と声が俺にだけ聞こえて来た。


 「おめでとう。スキルは得られたかな?」


 「はい。」


 「それなら全員ダンジョンから出るよ。」


 どんなスキルが得られたのかをダンジョンを歩きながら確認するのは危険だと思うから今は確認はしないでダンジョンの移動に集中する。


 スケルトンダンジョンの出入り口までスケルトンに襲われることなく到着すると、そのままダンジョンの外で解散となる。


 「それではここで解散だ。忘れずに探索者協会で探索者カードを受け取る様にね。」


 最後に桜井講師がそう言う中で探索者講習を受けていたそれぞれは動き出す。俺もそんな動きに合わせる様に探索者協会に向かって歩き出した。


 探索者協会の中に入った俺は最初に受付をした受付に向かった。そこは先ほどまで講習を受けていた人たちが並んでいるところだ。


 ここで俺の番が来るまでにどんなスキルを取得したのかを確認しようと思ったのだが、思いの外に探索者カードを渡すのが早かったお陰で俺の番はすぐに来た。


 「仮の探索者カードを出してください。」


 「はい。」


 スケルトンダンジョンの出入りに使った仮の探索者カードを出して受付カウンターに置いた。


 「はい。受け取りました。これが探索者カードです。」


 「ありがとうございます。」


 探索者カードを受け取った。これで俺は今日から探索者だ!

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