目を覚ますと、体中が汗ばんでいた。かすかにトーストの焼けたいい匂いがした。


「おはよう。よく眠れた?」


上から、彼が顔を覗き込んだ。


「多分。」


しばらく天井を眺めて、私は「あのさ。」と口を開いた。


「ありがとね。就活とか研究とかで忙しくなるかもしれないけど、もう少しダンスを続けてみる。その後のことは、その時になったらまた考えるよ。」


「あれ、もう?」彼は驚いたような声を出したが、布団からかすかに見える彼の横顔は笑っていた。「とっておきを用意してたんだけど、必要なかったみたいだね。」


上体を起こそうとして、腰に痛みが走った。私は呻き声をあげて、また布団に倒れこんだ。


「ごめんだけど、最後にもう一回、手を貸してもらってもいい?」

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天下無双 藤宮一輝 @Fujimiya_Kazuki

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