2話 1バイト先での出会い

 節分事件が起こったのが大学二年の時。それからは、バイト先の同級生に話しかけられることが増えた。彼は髭男のボーカルに似ているコアラ顔で、顔も性格もタイプだった。(これから彼のことをコアラ君と呼ぶことにする)しかも、同じ大学に通っていて、学科も一緒。三年生になってからは授業も一緒で、たまにシフトが被った時は、共通の趣味、アニメの話で盛り上がった。

 大きいサイズの制服を間違えて着てしまったとき、「かわいい」と言われ、別の日には「こんなにかわいい人にレジしてもらいたい」とも言われた。今振り返ると気持ちが悪いけれど、その時はいいなと思っていたから、キュンキュンしていた。ただ、シフトが被らなければ話すことはなかった。LINEもSNSも繋がっていなかったからだ。

 そんなある日、インスタにフォローリクエストが届いた。コアラ君からだった。なんということだ。大学生にとって、インスタは自己顕示の場所でもあり、出会いの場でもある。コアラくんからフォローリクエストが来たときは、めちゃくちゃうれしく、これはもう付き合えるのではないかと浮足立った。きたきたきた!


 しかし、そこからコアラ君に対して自分の気持ちが大きくなることはなかった。この交換した瞬間がピークだった。インスタを交換したという一見プラスなことが、今回の恋愛においては大いにマイナスに働いたのだ。

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