【140万PV達成!(人 •͈ᴗ•͈)】異世界転生旅日録〜生活魔法は無限大!〜
吉野 ひな
第一部
追放
第1話 一日目―追放と秘密
「家を出る準備はしておけよ?」
「分かってるよ、父さん」
(準備もなにも、荷物なんてカバン一つに納まるよ)
内心で悪態を付きながら、俺は村の丘に建てられた教会へと足を向けた。
どこにでもある村のとある農家の四男として生まれた俺は、今日、教会で【スキル鑑定】の儀式を受ける。
農家の四男ってのは、ただの労働力で、人間扱いをされない。寝る場所も、五歳になれば、上の兄と共に納屋で雑魚寝だ。食事も、長男と父母の残り。残飯処理もいいところだ。
そんな境遇を抜け出したいと思うのは、誰だって抱く不満だ。不思議なことではない。
♢
「神父様、おはようございます」
「おはよう、ルイ。今日の【スキル鑑定】は、ルイを入れた四人だよ。彼らが揃うまで、椅子に座って待っていなさい」
「はい、ありがとうございます」
スキル鑑定は、十歳になる年齢で、半年に一度の頻度で行われる。生まれに近い月齢で受ける決まりだが、基本的には、二回行われるどちらかを受ければ、問題ないらしい。
今回は、俺を含めた四人が儀式を受ける。
この村は、全部で三百人が暮らす中規模の村だ。家も、村の端から端まで点在している。だから、子供全員と知り合いというわけではない。
(俺も、村の端まで行ったことはないしね)
「では、スキル鑑定の儀を始めたいと思います」
俺が来てしばらくした後、神父様の宣言により、スキル鑑定の儀が始まった。
「ルイのスキルは、【生活魔法】と【鑑定】です」
「…ありがとうございます」
「気を落とさぬように。スキルは、使い方次第で活きるのでな」
「はい、ありがとうございました」
やはりというか、なんというか。
ステータスで表示されていた内容と、
神父様の慰めの言葉を背に、俺は父へ報告のために、家に戻った。だが父へ報告する前に、納屋に置いてあった荷物を取りに行く。
俺の魔法属性は【無】。
それに加えて、スキルが【生活魔法】と【鑑定】では、父の反応はしれている。
「ふん、くだらん。お前は、家を出ていけ」
(……ほらね?)
母も兄たちも、なにも言わない。
彼らにしてみれば、労働力が減るが、食い扶持は増える。三男の兄などは、食い扶持の残飯増量の日を、今か今かと待ち構えている。
「お世話になりました」
一応、十歳になるまで育ててくれた事実は変わらないからな。口先だけでも、礼は言うべきだろう。
俺は父と母に一礼し、その日の内に、家を出たのだった。
これが、俺自身の運命を大きく変える第一歩になるが、この時の俺は知る由もなかった。
金銭的に余裕はないが、俺には秘密がある。この村の誰にも隠し続けた秘密が。油断しないように、着実に進めていこう。
そんな俺に、衝撃的な事実が舞い降りて来るまで、後ニ日。
♢
「さて…今日はここで野宿だな」
森の中にある少し開けた場所は、野営をするのにもってこいだ。
「家をそのまま出てきたから、ステータスをゆっくり見れなかったんだよな」
誰もいない森の中、一人ごとを呟きながら、俺は「ステータスオープン」と唱えた。ブゥン!と音が鳴り、俺の前にステータス画面があらわれる。
(この世界の人々は、自分でステータスを見れることを知らないんだなぁ)
五歳の闘病中に出た高熱の副作用か。俺は、前世の記憶を思い出していた。
病気は全快したが、念の為と二、三日をベッドの上で安静にしていたんだ。それが、暇で暇で仕方なかった。
前世なら、テレビやゲーム、漫画やヨーテューブがあったけど、ここでは静かなものだ。だから俺は、前世で唱えたみたい10に入るあの言葉を唱えた。
「ステータスオープン!」
すると、どうでしょう。
半透明のボードが、目の前に表れるではあーりませんか!
名前 ルイ
年齢 10
性別 男
出身地 アーノルド王国ベーラン領ダナン村
魔法属性 無
スキル 生活魔法 Lv. ∞
鑑定 Lv.3
加護 無
称号 無
「良かった……【Lv. ∞】は、消えていなかった」
俺は、スキル鑑定の儀で読まれる筈の【Lv.
だが、ちゃんとここに存在している。
ただ、神父様に見えなかっただけなのだ。
他の人に『生活魔法 トーチ』や『生活魔法 ブリージとクリエイトウォーター』など、俺には、“生活魔法”のみの名前を宣言していた。
始めてステータスを見た5歳の時は、生活魔法だけだった。それが8歳になると、【生活魔法】の隣に【Lv.∞】が見えた。俺の鑑定レベルが上がり、この『Lv.∞』が見れるようになったのだが。
だけど、他の人のステータスが分からないので、比較しようがなかった。
だから、俺はこの日の【スキル鑑定】に賭けていたが『Lv.∞』が読み上げられることはなかった。
もし、これを持つのが俺だけなら?俺は、期待が膨れるのを感じながら、歓喜にも震える。
だって、俺はこの意味を知っている。それはすなわち『
生活魔法は、一般的に一人3つ授かれば、御の字だ。それが、無限に使用出来るかもしれないのである。
「これはやはり、チートじゃないか?」
と、独りで興奮するのも無理からぬことだった。周囲から見れば、怪しさ全開。
でも、誰もいないのでよしとしよう。
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