第四章 アンニュイなオレのご主人様 6
辺りを見渡すと、確かにフォーテルの言う通り、姿形大きさのバラバラな合成モンスターがまだウヨウヨいやがる。
今さっきオレらが相手にしてた合成モンスターは、その中でも中型の部類っぽい。
「・・・逃げた方がよくにゃい?」
「・・・オレもニャン吉の意見に同感だ。色んな意味で」
味方の傭兵や国の連中も、合成モンスターにほとんど何も出来ずにやられてる。
戦争っていうより、これはもうただの虐殺だ。
味方がいなくなって、こいつらが一斉にこっちに向かってきたら、もうどうしようもねえ。
「おいレオン。ミシェリアになんとか撤退しようって伝え――」
「おや、まだ終わってないんだね」
・・・辺りが混乱と喧騒の中。
何処からか、場にそぐわない、のんびりした声が聞こえてきた。
「やれやれ。この程度の戦力にこんなに手間取るなんて、まだまだ改良が必要だね」
あいにく、ミシェリア以外のニンゲンが何を言ってるのか理解できねえが、現れたのはこんな戦場に似つかわしくない、細っこくて、ヒラヒラで軽そうな服装のオスだ。
まあどんな服装しようが別に構わんが・・・なんなんだこいつは?。
「・・・つ・・・た・・・」
「???」
僅かな呟きが聞こえて振り返ると、そこには、まるで長年探し続けた恋人を見つけたかのような、そんな表情のミシェリアがいた。
「見つ・・・けた・・・見つけた! 見つけた見つけたとうとう見つけた!! あいつだけはあたしがこの手で殺すッ!!!!」
「あ、おい!!」
「死ねええええ!!!!」
制止する間もなくミシェリアは飛び出すと、普段使ってるクロスボウではなく、懐から取り出したナイフで、明確な殺意を持ってオスに襲い掛かった。
「ダメだミシェリア!!!」
ミシェリアからは死角になって見えなかったのか、それともオス以外、目に入ってなかったのか。
とにかくオスのすぐ近くにいた合成モンスターが、オスは無視してミシェリアに向かって動いていた。
「!!!!」
ミシェリアがそれに気付いた時には、既に合成モンスターの射程内で・・・。
「グリュウアアアアアッッ!!!」
こりゃ死んだな。と思った瞬間。
ミシェリアと合成モンスターの間に飛び出したレオンが、ミシェリアの代わりに合成モンスターにぶん殴られ吹っ飛ばされた。
「レオン!!! くっ! フォーテル!! ミシェリアを!!」
「わかってる!!」
合成モンスターがすぐ近くにいるってのに、ミシェリアは吹っ飛ばされたレオンを見て呆然としてる。
そんなミシェリアを、フォーテルは自分の背中に乗せてすぐに合成モンスターから離れた。
「レオンちゃん!! レオンちゃん!! 死んじゃダメにゃ!!」
ぶん殴られて地面に倒れてたレオンだったが、ヨロヨロと起き上がると、
「わ、わしは大丈夫じゃ。それよりお嬢は・・・?」
「自分がそんな状態なのにミシェリアの心配かよ・・・。そっちは心配ない。ほら」
オレとミノがレオンを庇うように合成モンスターとの間に立ち塞がると、その後ろで、フォーテルの背中に乗せられたミシェリアがレオンの隣に降ろされた。
まあ、立ち塞がったものの、合成モンスターに突っ込んでこられたらどうしようもねえんだけどな。
「お嬢は無事か。よかった・・・うっく・・・」
一時は立ち上がったものの、ミシェリアの無事を確認して安心したのか、レオンはまた力が抜けたように地面に膝をついた。
「おいおい大丈夫かよ? じじいは無理してねえでそこで休んでな」
「出来ればそうしたいところじゃが、そうも言ってられん状況じゃろう?」
確かに周りは合成モンスターがうじゃうじゃしてて、状況は圧倒的に不利。
つか、これはもう不利なんてレベルじゃなくて、今すぐ撤退コースだ。
勝てる気が全くしねえし、全滅するのも時間の問題・・・なんだが・・・。
「驚きましたよ。まさか、いきなり攻撃されるとは思ってなかったですからね」
そんなことを言いながら、レオンをぶん殴った合成モンスターの脇を抜けて、ニンゲンのオスが悠々と前に出て来た。
「なあ。なんで合成モンスターは、あいつを襲わねえんだ?」
「・・・それは、あやつが合成モンスターのマスターだからじゃ。合成モンスターは自然界には存在しないモンスター。そのマスターということは、合成モンスターを作り出したのもあやつということじゃ」
ミノの至極当然な疑問を、特に考える素振りもなくスラスラと答えるレオンに、オレはちょっとした違和感を感じた。
「なあ、さっきも思ったんだが、妙に合成モンスターについて詳しく――」
「さきほどいきなり僕に襲い掛かり、今も非常に怖い表情で僕を睨み付けてる、そこの君」
オスがミシェリアに話しかけた・・・らしい。
ミシェリア以外のニンゲンの言葉は理解出来ねえから、なんとなく雰囲気だが。
「もちろん敵同士ですから、仲良くいかないのはわかっています。ただ、君は随分と僕に敵意を持ってる気が――」
「あたしのことを忘れたとは言わせねえぞクソ野郎!!!」
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