第3話:友人と伝説 2

強力な封印が徐々に消えていき、強風が静まり、雲が急速に晴れていった。タズナはこれまでにない憎しみの眼差しでジェラルドを見つめていたが、状況を理解することができた。ジェラルドの自信は明らかで、戦いは時間の無駄になるだけで、さらに注目を集めてしまうだろう。その時、タズナはオドールと共に瞬時に転送され、巻物を手にして姿を消した。


「ここで終わりではない、ジェラルド。世界は変わりつつある、新たな時代が近づいている」タズナは影から冷たく言った。「ヒラオキがこの世にいなくなった今、最強を巡る戦いが始まる。覚えておけ、この言葉を、ジェラルド。もう何もかも以前のようには戻らない。」


強風が謎の男たちを包み込み、彼らはあっという間に跡形もなく消えていった。ジェラルドはその様子を、タバコを吸い終わるまでじっと見つめていた。


「なぜ来たんだ……?」ヒラオキは息も絶え絶えに言いながら、頭を上に向けて彼をよりはっきりと見ようとした。「やめろと言っただろ。」


「その封印は普通じゃなかった」ジェラルドはタバコを一本取り出しながら、歩きながら言った。「あのエネルギーは非常に不自然だった。でも、君からその印を消すことはできないと分かっていても、確認しておくべきだった。」


ヒラオキは黒いパンツと赤い腹巻きを着け、ほとんど焼け焦げた緑のシャツが残っていた。そのシャツはほぼ焼け落ち、彼の大きなタトゥーがあらわになり、胸元が完全に露出していた。彼の力強い体格が目立ったが、最も注目を集めたのは胸の中央にある「赤」という文字が刻まれた奇妙な印だった。


「なるほど、彼の目的はそれか」ヒラオキは血を吐きながら、痛みで腹を押さえて言った。「もし奴らがその印を手に入れる方法を見つけたら、全ての者にとって大きな危険だ。お前が何を企んでいるかを突き止めろ、お前だけがそれに立ち向かうことができる。」


「なぜ自分の人生をこんな風に終わらせたんだ?」ジェラルドは彼の隣に座りながら、タバコをもう一本取り出して言った。「本当に、お前のことを理解するのはいつも難しかった、先輩。」


「何を探しているのか知る必要があったんだ、もう長い間俺を追ってきている」ヒラオキはジェラルドからタバコを奪い取って一口吸いながら言った。「あと数週間しか生きられなかった、ルミアが数日前にそう言っていた。俺が息子のことを話したのを覚えているか?」


「そうだな、あの北の都であの女と一緒に置いてきた子だろ」ジェラルドは友人の弱った様子を見ながら不思議そうに言った。「確か、名前はレイナーだったか?」


「最後に一つ頼みがある」ヒラオキはタバコを全部吸い終わりながら答えた。「俺の息子がその印の持ち主になる時が来たんだ。」


ジェラルドは不思議そうに彼を見つめ、その言葉が本物であることに気づいた。なぜ自分をこんなことに巻き込もうとしているのか理解できなかったが、彼の言葉には何かしらの論理が感じられた。


「お前が子供を好まないことは分かっている」ヒラオキは顔を鳥の群れに向け、遠くの地平線に飛んで行くのを見ながら言った。「彼には大きな負担になるだろう」そう言うと、目を閉じ始め、声がだんだんと小さくなっていった。「俺の小さな息子が、正しい道を選んでくれることを願っている…」


ジェラルドは彼の隣に座って、彼の強力なオーラが徐々に消えていくのを感じ取った。最後の鼓動が彼の体を反対側に倒れさせ、ジェラルドはその肩を掴んで、倒れないように支えた。


「断ることはできないと分かっている」ジェラルドは亡き友を抱えながら言った。「もう安らかに眠れ、先輩。お前の遺志は忘れない。もし暗い時代が迫っているなら、何が来ても備えなければならない。」

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ライナー: 君の運命を見つけろ @InoSoske

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