ライナー: 君の運命を見つけろ
@InoSoske
第1話:伝説の終わり
キコリ大都市の南に広がる森で、かつてないほど激しい戦いが繰り広げられていた。
大地は震え、衝撃波が目に見えるほどの勢いで広がり、轟音が都市の中心部にまで響き渡る。
その戦いに関わっていた一人こそ、「生ける伝説」と呼ばれる男、平沖 祭 (ひらおき まつり) であった。
長く白い髪をなびかせ、左腕から背中にかけて刻まれた蛇の刺青が彼の象徴でもあった。
戦いは終幕に近づいていた。
突如、空から雷鳴が轟き、一筋の雷が大地を打ち、凄まじい衝撃波が発生する。
無数の木々があらゆる方向へと吹き飛ばされ、地面をえぐる。
――ドン!!
平沖の身体は雷撃による爆風で吹き飛ばされ、猛烈な勢いで巨大な岩に叩きつけられた。
その衝撃で地面に深いクレーターが生まれる。
「……ッ! ぐっ……」
「生ける伝説」の異名を持つ男の身体は、見るも無残な姿だった。
全身は無数の傷と血に染まり、腕も足もまともに動かない。
平沖はゆっくりと崩れ落ち、砕けた岩に背を預けるように座り込んだ。
――ゴホッ……!
口から血を吐き出しながら、苦しげに言葉を漏らす。
半開きの瞳は虚ろで、すでに彼の身体は限界を迎えていた。
ザッ……ザッ……
その時、森の闇の中から二つの影が近づいてきた。
彼らの顔は影に隠れ、見分けることはできない。
しかし、一人は並外れた体格を持ち、右肩には巨大な大剣を担いでいた。
「ふむ……これが“生ける伝説”ヒラオキ・マツリの最期か」
男の一人が数メートル先まで歩み寄りながら呟いた。
「この状態で俺たちと互角に戦うとは……驚いたよな、オドル?」
「ここまで己の身体を犠牲にして、その力を手に入れたのか」
オドルは影の中に立ったまま、肩に担いだ大剣を微かに動かしながら返した。
「だが、すべてには終わりがある。誰もが “最強” であり続けることはできん……お前の体調の悪さこそが、お前の敗因だったのさ」
一人が奇妙な文字で埋め尽くされた巻物を取り出し、静かに数歩前へと進んだ。
巻物を広げ、地面に置くと同時に、彼は右手をそっとその上にかざした。
ゴォッ……!
突如、強烈な突風が辺りを包み込み、大気がざわめく。小さなバチバチッという火花が周囲に散り、空間が不気味に歪み始めた。
ド……ドドド……!
大地が震え、重力が揺らぎ、岩がふわりと持ち上がる。まるで無重力の空間にいるかのように、重たい石々が乾いた葉のように宙を舞った。
空には漆黒の雲が広がり、森全体が闇に包まれる。異変に気づいた住人たちは、遠くから不安げに空を見上げていた。
やがて、巻物の中心から紋章がゆっくりと浮かび上がる。
その瞬間、ヒラオキのまぶたが微かに動いた。
ぼやけた視界の中、彼の目に映ったのは……かつての大切な仲間の影だった。
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