第19話 物理学者の契約
決闘を終え、そのまま休んだ俺たちは何事もなかったかのように次の日には授業を受けていた。決闘当日のみが振替になるだけで、次の日は普通に授業が行われる。まぁそりゃ生徒の都合で何日も休みにされたら先生的にはたまったもんじゃないもんな。
そして今、俺とメティはレインとキルアさんを含めて食堂で昼食をとっている。
「昨日の決闘は見事だった。体は十分に休められたかい?」
「メティ的には身体的疲労より、精神的疲労のほうが強そうだったから寝ただけじゃ完全回復とはいかないみたい」
「大勢の前…、あんなにがんばったんだから…仕方ない」
「えへへ…、あり…がとう…」
メティとキルアさんは最近よく一緒にいたからか、メティもある程度話せるようになってきた。本当にうれしい限りだ。
「まぁ、ごくろうさまの言葉はここまでにして。すでに知っているだろうが。メティスさんが女神の遣いって噂が流れている」
真剣な顔をしてレインは話を切り出した。女神の遣いであるリンにメティは勝った。それもすでに昨日の話、今はメティに関してのあらぬうわさが学園銃を駆け巡っているのだ。決闘の内容自体はまるで作戦勝ちのように見えるが、雷魔法に関しては物量でゴリ押しした感じもある。つまり、リンに勝てるぐらいの魔力量があるならメティも女神の遣いなんじゃない?って疑われているのだ。
まぁ、ずっといる俺がメティから日本に住んでただろ!って思ってない時点で女神の遣いではなさそうだけど…。俺のことを信じる奴が噂を立ててるわけじゃないからここ数日はその噂でもちきりだろうな。
「作戦で勝ったのに…、勘違いする人が多くて困る…」
「キルアの言う通り、メティスさんの作戦勝ちではあったんだが…。まぁ文字だけでとらえれば自由の遣いにかった新入生…、だからな。変な噂が立ってしまうもんさ」
「それで、その噂がどうかしたのか?数日で静かになるもんだと勝手に思っていたのだが…」
俺が前世で学生だった時に何回かやらかしていろんな噂は流れたが、どれも一週間と持っていなかった。だから、今回も勝手に数日のうわさだと決めつけていたが…。どうやら俺は思ったよりも浅はかだったらしい。
「数日で静かになったらいいんだけどね…。多分この噂は長く続く」
「それは…、本物の女神の遣いが話に絡んでいるからか?」
「話が早くて助かるなぁ。簡単に言えばそうだね」
「この話についてけるの…すごい…」
「キルアですらついてこれてないもんね」
俺も別に話の全貌が見えたわけではない。ただ、本物の女神の遣いが絡んでいるせいでもう一人ぐらい本当の女神の遣いがいてもおかしくない…、だからやっぱりメティは女神の遣いだ!ってなりやすいんだろう。それに…、なにも学園内だけでこの噂が収まるとはレインも考えていないんだろう。いや、この話をした時点でわかる。メティが非常によくない方向で噂に巻き込まれる可能性を考えているんだろう。
「ルイス君はちょっと考える時間を与えるだけでどこまでも思考してくれるんだね」
「当然だ。特に今回はメティがかかわってるんだからな」
「メティスへの愛は本物…、いい旦那さんを持ったね…メティス…」
「で、でしょっ」
「うちのキルアは話の本筋が見えなくなると脱線する癖があってね…、わかりやすく話をしよう」
「わかりにくい愛も会話も意味がない…、わかりやすいのが私は好きだよ…レイン…」
「わかった、理解した。じゃあ今回の本当に話したかった点をわかりやすくまとめるよ」
「聞く…」
「そもそも、本物の女神の遣いがいる時点でもう1人いてもおかしくないってなる。それに、女神の遣いが1人いるってだけでも嫌な連中は聞き耳を立てるっていうのに、もう1人いるってなれば聞き耳どころかその目で確かめにくる…かもしれないって話さ」
「嫌な連中?」
なんだ嫌な連中っていうのは、女神の遣いに対抗できるような組織があるっていうんだろうか…。
「わかりやすくいうと…、自由会。女神の遣いによる女神の遣いのための最悪な集い…だよ」
「自由…、会…」
まさかここでまたその名前を聞くことになるとは思わなかった。自由会、メティが両親を失くした元凶だ。
ちらっとメティの方に目をやると明らかにどこか怯えていた。フラッシュバックしてしまったのだろうか、あの残酷な光景を。
「まぁ、女神の遣いを勧誘する動きが活発でね…。10年前ぐらいから各地で被害が出てるんだよ」
「さっきの噂も相まってメティも勧誘されるかもってことか…」
「そういうこと」
「それに…、昨日負けて恥を晒してしまったリンは特に、勧誘されたら入っちゃいそうだよね」
想像ができてしまう。あんな性格の人間が、力を持ってるあなたが必要なのと勧誘されてしまえば、自由会に入ってしまいそうだ。それに、自由会に関して学園から説明をうけているかもわからない現状だと…いろいろと考えなければいけない。
「おっと、そろそろ時間だね」
「話過ぎたな。急いで教室に向かわないと」
「まだ完全に理解しているわけじゃないのに…」
「この話はまた後で、ルイス君にまずは理解してほしかったからね」
食器を片付けた後に、教室に向かった。授業が始まるぎりぎりに教室についたせいで、先生からはちょっと鋭い目で見つめられてしまった…。
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