第3話物理学者の病み上がり

 メティと俺は花を咲かせたあとすぐに寝てしまった。次の日の朝、メティが元気になったことを喜んでいる人がいた。メティの両親だろう。


「メティ、よかったよ…」

「本当によかった…」

「パパもママも泣きすぎ!私元気だもん!」


 メティはベットの上で胸に手を当て、何故か威張っている。メティの親とメティ自身の反応にギャップがあり少し笑ってしまう。


「君はパーカー先生の息子君だね?」

「はい、ルイス・パーカーです」

「私の初めてのお友達だよ!」

「あらあら、メティにも春が来るのかしらね」

「お、お母さん。まだ二人は5歳だぞ?少し気が早いんじゃないか?」

「お父さん、こういうのは早くから心して待っとかないといつのまにかってことありますからね」

「そういうものか…」


 春って…俺たち一応5歳だから恋心とかまだわからないぞ?いや、俺は中身だけは60歳ぐらいだけど。とはいえ5歳の自分が中心なので恥ずかしくとも子供にように振舞ってはいる。


「それじゃ、パパたちはパーカー先生と話してくるからメティは待っててな」

「わかった!」

「ルイス君もメティのことよろしくね」

「はい」


 メティが元気な子だとは昨日の時点で理解していたが、メティの母親も気さくで明るい人だな。少ししか話していないが優しさが伝わってきた。


「ねね、この村って図書館あるのかな?」

「図書館?」

「うん。本がいっぱいあるところ」

「それなら私知ってる!村長の家がいっぱい本あったよ。村長さん怖いけど、優しいから好き」

「なるほどなるほど…」


 村長さんは顔が怖いのだろうか?

 少し気になるが、それはさておき知識を得るならまずは本だよな。前世でも学ぶときは基本ネットなどではなく、信頼できる文献を参考にしていたからな。


「うーん…。一緒に行こうか?私も行きたい」

「いいの?嬉しい!でも、本読みに行くだけだよ…?」

「ううん、ルイと行くのが嬉しいの!だって友達だよ?友達ってお互いに助け合うんでしょ?だったら私はルイが友達になってくれたかわりに一緒に本読みに行くの!絶対楽しいもん」

「そう…かな…。でもつまんなくなったら言ってね?外で遊ぶの僕も好きだから」

「わかった!ルイ大好き!」


 やはり嬉しさや喜びと恋心の違いは理解できていないのだろう。大好きと言われてすごく嬉しいが、中身が60歳ということを踏まえるととんだ変態野郎になってしまう。まぁ、実際この世界で5年生きている価値観も自分の中にあるので5歳相手に好きという感情を抱いてもなんら不思議ではない。二つの世界の記憶があるっていうだけだ。簡単な話、一つの人格に二人の価値観が埋め込まれているのだ。魔法についても気になるが俺自身の記憶のことについてもどう処理されているのかは研究対象として十分興味がある。


「本で何するのー?」

「魔法にについて知りたいんだ」

「あ!昨日の花の魔法が気になったんでしょ?うふふ、嬉しいな〜」


 ベットの上で体を左右に揺らして喜んでいる。多分自分の教えたことに興味を持ってもらえるのが嬉しいのだろう。


「だったら、今日行こう!思い立ったが吉日だよ!」

「それはパパとママが許してくれないんじゃ…」

「大丈夫!私がどうにかするよ!」


 ベットから降りるとスタスタと廊下に出て行ってしまった。うーむ、流石に病み上がりだから外に出させてもらえないと思うけどなぁ。


「無理だったー」

「だよね…」

「でもね、明日ならいいって!もう一日寝て、元気だったらいいって言われたから明日行こうね?」

「ふふっ、いいよ!いこう」


 今日はダメだけど、明日ならいけるっていう前向きな考えが微笑ましくてついつい笑顔になってしまう。この世界に学校があるなら、将来は元気一杯の美少女姫になりそうだな。

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