物理学者の魔法研究

芝鳥青

1.序章

第1話物理学者は思い出す

 俺が5歳になった時、物理学者だった前世のことを思い出した。

 

 俺の前世は、日本生まれの吉田健という普通の名前だった。ただ、一つ言えることは頭が誰よりも良かったことだ。好奇心が人より何倍も強く、気になったことはとことん調べあげていた性格から頭の良さが来ていたのだと思う。高校の時に俺は光が波なのか粒子なのかが気になってしまった。俺は物理学者を目指し、光が何なのかという研究に没頭した。その過程で電子の配置が確率として曖昧なことを利用し、飴玉程度の大きさのものならテレポートできるという論文を世に発表した。実用的な瞬間移動を人類が初めて手に入れたから、世間からは天才や人類史上最も賢く偉大な物理学者などと謳われた。

 そして、60歳からの記憶がぽっかりと穴が開くようになくなっている。きっとこの時に死んでしまったのだろう。人は嫌なことを忘れる生き物だから、自らの死を思い出せなくても何ら不思議ではない。


「ルイス!」

「よかった…」


 前世のことを思い出した反動か、どうやら俺は10日間熱にうなされていたらしい。もちろん現世での記憶も持っているため、ルイス・パーカーという自分の名前も思い出せる。両親がこの村で小さな病院を営んでいることもしっかりと記憶している。


「まだ何があるか分からないからな。安静にしていなさい」

「そうね…、ママたちは仕事に戻るからね」

「わかったよ」


 頭は60歳でも、体はまだ5歳だ。10日寝ていたというのにまだ寝足りないのか、両親が部屋を出て行くと同時にまた眠りについてしまった。

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