異世界転生して、邪神になった男。ダンジョンと霊能力者がある世界の日本に戻る。敵には邪神の力でざまぁしてやるぜ。

喰寝丸太

第1章 邪神潜伏編

第1話 落ちこぼれの日常

 俺は影本かげもと・ダーク。

 高校生だ。


 名前から分かるように、日本人と外国人のハーフらしい。

 らしいというのは、両親の記憶がないためだ。

 見た目はたしかに外国人だ。

 ハーフなのは間違いないだろう。


 高校3年に転入で入る前の12月から前の記憶がない。

 親切にしてくれる役人の有賀さんによれば、両親が亡くなったショックでそうなったと言っていた。

 親戚もいないし、天涯孤独なんだよな。

 ただ、記憶もないので、悲しさがないのが良かったと思う。


 それと、なぜか日曜日はいつも何をしていたかの記憶がない。

 日曜日だけ、記憶喪失。

 ちょっと不安だけど、慣れた。

 月曜日の朝はなぜか凄いスッキリしている。


 きっと、日曜日はたっぷり休んだり楽しんでいるんだろうな。

 体が要求しているのかも知れない。

 日曜日の記憶喪失は俺にとって必要なことなんだと思っている。


「おはよう」


 月曜日の朝の教室。

 元気に挨拶して入る。


 女子はみんなおはようと挨拶を返す。

 それを男子は苦々しい目で見ている。

 俺が女子にもてるのが妬ましいのだろうな。

 まあ、気持ちは分かるけど。


影本かげもと、約束を忘れるなよ。昼休みいつもの所な」


 そう言って去ったのは比口。

 不良グループのひとりだ。

 俺は毎日金をせびられている。

 色々と酷いこともされているが、日曜日があるとなぜかストレスがリセットされちゃうんだよな。

 だから、つらさがかなりましだと思っている。


「ダーク、お前、大丈夫か? 虐められてないか? 何時でも言えよ。あいつらはちょっと許せない」


 こいつは共田ともだ明弘あきひろ

 男子で俺に挨拶してくれるのはこいつしかいない。

 趣味が合うので仲が良い。

 明弘あきひろは前に俺が金をせびられて虐められている現場を見て、不良グループと喧嘩した。

 その時、大怪我を負った。

 ポーションがあったから、後遺症とかは残らなかったけど。


 俺は、明弘あきひろにもう怪我はして欲しくない。

 俺なら耐えられる。

 日曜日があるから。


「うん、その時は言うよ」

影本かげもと君、いつも月曜日は明るいね」


 そう言ってきたのは、学園のマドンナ、月城つきしろ安奈あんな

 美人な上に成績はトップ。

 落ちこぼれの俺とは雲泥の差だ。

 だけど、俺によく声を掛けてくる。

 俺の顔が良いのは分かっている。

 俺には顔以外の魅力なんてないから、きっと月城つきしろさんもそれで俺が気になるんだろう。


「月曜日は調子が良いんだ。なんでか分からないけど」

「日曜日に、思いっ切りリフレッシュするタイプなのね」

「そんなところ」


 記憶がなくて日曜日は何をしているか知らないけど。

 いつもの授業が始まる。


 高校に入る前の記憶がないので、授業にはついていけない。

 勉強を中学生レベルからやり直したいが、時間がない。

 不良グループにお金を持っていかないとならないから。

 放課後はいつも金稼ぎに奔走してる。


 いつも通り、昼休みに剣道部の部室に行く。

 ここが、不良グループのたまり場だ。


影本かげもと、金持って来たか?」

「うん。2万円で良いんだよね」

「おっ、まだあるじゃないか。全部、寄越せよ」


 財布の中にまだ札が残っているのを見られて全部巻き上げられた。

 月曜日はなぜかお金が多いんだよな。

 記憶がない日曜日はどこかで稼いでいるみたい。


「毎回、これぐらい持ってくれば、殴らないでいてやる」


 不良がそう言いながら、俺を殴った。


「殴らないって言ったのに」

「文句があるのかよ。まだ、殴られたいらしいな」


 かなり殴られて解放された。

 昼休みはいつもこんな感じだ。

 金が少ないと全裸にされて酷いことをされることもある。


 火の点いたタバコを押し付けられるなんてのはしょっちゅうだ。

 全裸で花火の火のシャワーを浴びせられることもある。

 幸いなのは、傷の治りが異様に早い。

 火傷の痕もすぐに治る。

 殴られた痣もだ。


 この世界の人間はアビリティという物を必ずひとつは持っている。

 だいたい、10歳前後に覚醒して、アビリティが生える。

 このアビリティの数でハンターランクが決まる。


 アビリティの数が増えると、肉体の強度やもろもろの性能が上がる。

 同じアビリティでもランクが上がると強さが上がるのだ。

 だから、上のランクの奴には、勝てない。

 武術とかの達人でもならない限りこの差を埋めることはできない。


 Fランクのアビリティはひとつだ。

 それからランクが上がるごとに1つ増えて行く。

 Eが2つ。

 Dが3つ。

 Cが4つ。

 Bが5つ。

 Aが6つ。

 Sが7つ以上。

 国によっては、SSが8つで、SSSが9つにしている所もある。

 ただ、現在、世界中で8つ以上のアビリティを持っている人間はいない。

 過去にはいたらしいが。


 覚醒の時以外にアビリティは生えない。

 覚醒で人生の全てが決まると言って良い。


 努力しても何をしてもアビリティは増えないので、後からランクが上がった人間はいない。

 ちなみに俺はFランクだけど、アビリティを持ってない。

 未覚醒だろうと専門家は言っている。

 治りが早い理由として、俺は覚醒してないアビリティではないかと思っている。


 俺は覚醒が遅いだけ。

 そういう希望があるので、くじけない。


「ダーク、やっぱり虐められているんじゃないか?」

明弘あきひろ、良いんだ放っておいてくれ」

「くそっ、俺がもっと強ければ、あいつらなんか瞬殺なんだけど」

「その気持ちだけで嬉しいよ」


「話は聞いたわ。私がガツンと言ってあげましょうか」

月城つきしろさんが強いのは知ってるけど、俺の問題だから」


 今日はハンターランクの検査がある。

 未覚醒なのは俺だけだから、俺だけに行う。

 保健室の先生が、機械を俺に向けて使う。

 ピッと電子音がした。


「まだ、未覚醒ね。でも、諦めるのは早い。遅れてくるのは物凄い才能だからよ。先生、応援してるから」


 保健室の先生が慰めてくれた。


「頑張ります」


 この世界、ハンターランクが物を言うのはダンジョンがあるのだ。

 ダンジョンの資源は宝の山だ。

 食料、武器、薬、あり得ないほど高性能な物はダンジョンのモンスター素材から作られる。


 ダンジョンでモンスターを狩るハンターが、社会地位になるのも必然だ。

 不良達のリーダーはBランク。

 子分の不良達はCとD。

 明弘あきひろはCランク。

 月城つきしろさんはSランク。


 最低辺のFランクの俺は、どうやっても不良達には勝てない。

 就職もハンターランク次第だ。

 俺は、高校を卒業したら、小さい会社に入るのだろうな。

 きっと、ブラック企業だ。

 Fランクの行先なんてそんなもの。


 でも、日曜日さえあれば、なんとかなる気もしてる。

 学業を頑張りたいが、今の俺ではどうにもならない。

 なにせ、中学生の学力レベルも怪しいからな。


 放課後、不良達のリーダーである鮫島さめじまが教室に入って来た。

 来いと俺に手で合図して去る。


 仕方ないので、剣道部の部室に行く。


「よう、影本かげもと。お前、月城つきしろを呼び出せ」

「嫌だ」

「ちっ、落ちこぼれの癖に生意気だな」

「嫌なものは嫌だ。殴られたって、何をされたって嫌だ」


 月城つきしろさんが好きだというわけではない。

 でも、鮫島さめじまが何かろくでもないことを計画しているのは表情から分かる。

 

「明日から、持ってくる金は倍だ。少なかったら歯を一本ずつ抜いてやるからな」


 倍はきつい。

 歯を抜かれたら、治り易い能力で歯が生えてきたりするのかな。

 そんなに上手くは行かないんだろうな。

 この世は糞だから。


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 本作は『ジョブなし魔力なし男は生贄にされ、正義の邪神になってざまぁする。クズな敵はもれなく地獄行きだ。』の続編というか日本サイドです。

 異世界サイドは1章が書き終わりましたが、まだ完結してません。

 でも、そっちを読まなくても問題ないように書いてあるので、公開に踏み切りました。


 邪神になったいきさつが分かる異世界サイドもよろしくお願いします。


異世界サイドのリンク

https://kakuyomu.jp/works/16818622170282444994

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