ストーリーが分からない逆ハー乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、無事溺愛モードに突入しました

六花心碧

第0話 プロローグ

「そなたは当然、俺を選ぶのだろう?」


 そう言って、ミカエル様は私の顎を掬うように手を添えて親指で私の唇をそっとなぞった。

 こちらをまっすぐ見据えたその顔には不敵な笑みが浮かんでいる。


 私は王子の風格が漂った彼をまじまじと見上げた。

 いつもに増してイケメンっぷりが眩しい。



「勝手なこと言うな。俺に決まってるだろ」


 女性にも見紛うほどの美貌を持ったロジェは、そう言いながら美しい薄紅色の長い髪を揺らしてこちらへ歩いてくる。


 私たちの目の前に立ち止まった彼は、その美しい顔に妖艶な微笑を浮かべながら恭しく私の手を取り甲にキスを落とす。


 こちらを見下ろすその瞳は色香の漂う熱がこもっていて、私の鼓動はドクンと跳ねる。


「あ、あの……」


 

 言い切らないうちに突如、強い力で引き寄せられ、ロジェとミカエル様から引き離された。


 気づくと私は後ろからシリルの腕に抱かれていて、彼は私を二人からガードするようにその逞しい胸の中に閉じ込めた。


 サラリと額にこぼれ落ちた銀髪の間から、美しいヴァイオレットの瞳を鋭く光らせて言う。


「ご心配には及びません。ルーチェには家族の私がついておりますから」


「家族って……お前たち血は繋がってないだろ」


 そう言ってロジェはシリルを睨みつけている。

 シリルはそれには何も答えず、端正なその顔に美しい微笑みを浮かべているだけ。


 3人の男性たちの間に、ピリッとした緊張感が漂う。




 なんでこんなことになっちゃったんだろう……。



 コレって完全に――――逆ハールートに入っちゃったってことだよね?!?!


 キスだけでは済みそうにない彼らの情熱に、私は耐えられるのだろうか……!

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