序章3 歪んだ暗号
{世界が滅びる予言(*メシアの予言)}
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4×56年 *聖マロン教会(*聖マロン神聖国)、175代目*メシア・マーティン・マリアが受けたとされる。同国歴代の聖女が神を仲介していた。(預言者とは、*聖魔法により啓示された託宣を伝達あるいは解釈し、神と人とを仲介する者と定められている。)
『東に災い降り注ぎ
血と水が流される。
言葉通じぬ新獣魔が現れ
残国力合わせねば生命なきものに。』
聖教書『聖女録』第26章5節 新共同訳
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「ここの肉美味しいね。なんだろう?今日のお昼にサンドイッチでも作ってもらう?」
「むしゃ…むしゃ…ごくっ。いいんじゃない?ぼくさんせーだよ!ケルとウルの分は貰えるかな?」
「ってか…良い加減期限直してよ〜!ね?ほら?手でも繋ぐ??逃げないってば〜?」
私の目を見つめながらモグモグと口だけを動かす。食べるなら食べるで集中して欲しいよなんて思いながら、そんな彼女のせいで私自身も集中出来なくて最悪だ。とはいえこれなに肉だ…?美味いんだけど、、。朝のドタバタが済み、私たちは泊まっている宿の朝食を食べていた。
異様な雰囲気のせいか、私の仲間たちが美少女揃いなせいか、同じくして朝食についている冒険者らしき人々は会話を聞くように私達に注目している。宿のレベルはさほど高くないが、最初の村という事で安定した所から出発したからなかったのだろう。村人もダンジョンの発展と共に冒険者と共存し、中々にのんびりとしながらも活気に溢れた村になっている。
結局、私の差し出した手をなんだかんだで握る勇者さん。ちょっとだけ後悔。素直に握るのかよ。ってか食べづらいから言わなければ良かったなあ〜。
少しだけ暖かさが指先からじんわりと伝わる。その暖かさがちょっとだけ嫌だったりする。昔を思い出しちゃうから触られるのが苦手なんだ。このパーティにはとことん向いていない。
でもまあ…初日だし、頑張るか、、そう思いつつ右の耳から音が聞こえた。ああ、お姉ちゃん。
『おはようアイリス、貴方のことは嫌いよ。ところで50日ほどお父様が帰ってこないの。では
風が貴方の味方でありますことを。』
これは私のスキルの一つ、「テレパシー」というやつだ。私と姉はエルフ種の血が入ってるためそういったスキルが使える。ただ血が薄過ぎて何か魔道具で媒介しなければいけないんだけどね。
内容は…
いつも通り真面目なお姉さまで嫌になる。ゲージが萎えたようにきっと下がっているのだろう。
そしてこの連絡を受け取った事で、勇者様がピクリと眉を顰める。
私にテレパシーのスキルがあるように勇者様が型にもスキルはあるのだ。
例えば、嘘を見破る「真実の目」とかね。
「アイリス〜!悲しい感情になったけど、お姉ちゃんから連絡きた?いつも思うけど貴方のお姉様厳しいよね。」
ちなみに、このもふもふってしたやつもいくつかスキルを持っている。勝手に感情を読み取ってくる「マインド」などそのままではある。
しかしながらこのスキルっていうのが、私の仲間達はとても強力で残酷だ。例えば、この勇者の「真実の目」に「マインド」が合わさるとどうなるか…
「ねえ、なんてきたの?」
「あはっ、どうでもいいじゃないか。愛しのお姉様との会話聞かれるの恥ずかしいし。」
繋いでしまった手を改めて後悔する。ぎゅっと握られた手は絶対離さないと言っているようで、机の上に置かれたサンドイッチ。それから仲良しのように握りしめられた手。美しい顔が私だけをのぞいて…周りの人からはいちゃついているようにでも見えそうだ。私だったら、手なんて繋いでないで飯くえよ!って確実に思う。
だが、しかし、下から覗き込むように私を見つめる金色の瞳は冗談さえ許さない。
まあ、バレるんだ。テレパシーなんてチートだろって思うじゃん。でも勇者様はもっとチートでいつもこう連絡が来た事がバレてしまう。まあ素直に言わなくちゃいいって思うんだけど、言わないといけない理由もあってさ。
「ちゃんと言うから睨まないでよ。『おはようアイリス、貴方のことは嫌いよ。ところで50日ほどお父様が帰ってこないの。では
風が貴方の味方でありますことを。』
ほら一言一句あってるだろ?勇者さん」
私の言葉を聞き、しっかりスキルを使いながら聞いたんだろう。合ってたことにうなづいてた。スキルにもレベルがあり、勇者の固有スキルはMaxだ。だから彼女に嘘はつけない。
「…あってる。まあいいわ。でもそれより、貴方のお父様は大丈夫なの?」
「…大丈夫じゃない?実質お姉様が王様だし。」
「…そう。」
以前として繋がれた手。サンドイッチはもう少しで食べ終わるというとこまで来てるが、残り少しが難しい。後は私が食べ終えたら終わりということで四苦八苦してたら、見兼ねた聖女さんが口に運んでくれた。
「モグ…モグ…ありがとう!流石優しいね!」
「ふふふ、かわいらしいですね。いつでもお手伝いしますわ。」
私たちは仲良しに和やかな朝食を終える。いちゃついてるような楽しげな会話。何事もなく終えられた。周りの冒険者パーティは最後まで私たちの方をジロジロみてたな。
軽く食器を持ってくと食堂の中から良い匂いがただよってくる。
「これとても美味しかったよ!何の肉入ってるの?あと昼ご飯用ももらえたりする?」
「見た目によらず、嬉しいこと言ってくれるねえ!ありがとうな!
昼か、肉無しなら作れるんだが…、これは一角ラビットという畑に出る外獣なんだが、、今はちょっと在庫がなくてね。」
「ああ、ダンジョンのせい?」
私がなるほどなって頷くと、目の前のお母さんは目の前のフライパンを置いて、やれやれというように話し始める。忙しい朝時を終えたからかちょっと疲れているように見える。
「そうなのよ。ギルドにも依頼出してるんだけどね、あまり出してこなかったからランク低くて受けてくれる人も居ないし。また外獣は今利益出ないでしょ?だからやる人も居ないし、困ってるのよ。本職がね儲かるのはいいんだけど、、」
ふーむ。ちょうどいいかもな。50日もあるし、、。
「そしたら私たちそれ受けてこようか?これからギルドにいって依頼を探すとこだったんだ。」
「えっ、いいのかい!?って本当に大丈夫かい?あんたの後ろのべっぴんさんが驚いてるけど…」
振り返ると言葉通り、勇者様が驚いてた。まあ、確認取ってないけど何も言ってこないということは大丈夫だろ。意外とうちの勇者様は人見知りだから…話せないだけかもしれないけど。
「あはは、大丈夫。うちのリーダーは優しいんだ。」
「ああ…じゃあ頼んだよ。見た目で怪しいやつかと思ったけど、良い人じゃないか!!今日の夕飯は豪華にするからね!」
「ありがとう!じゃあ行ってくるよ!」
見た目が怪しいって!?
本当にそうだよね。
美人3人に囲まれて、一人目が黒い布で覆われた耳にも首にもアクセサリーが大量につけられてる女。周りの冒険者が話しかけてこなかったのはこのせいかも知れなかったかなんて思ったり。
「とりあえず行こうか」勝手に受けた事に小言を言われる前に私は宿を出る。依頼の内容的に焦ることもなさそうだ。でもちょっと振り返る。不満げな勇者様。…やっぱりうちのパーティって美人だなって思う。
『50日その街で滞在。父が動いている。愛してます。』
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