詩集

城異羽大

牙城を発つ



音量マックスのギターロック

響いてたのは街の騒音だけだった

部屋にかけた一曲

それだけで色がついた

空は晴れていたんだ


つけっぱなしの電気に黒い窓

起きた時間はダメ人間の証明通知

空襲の音がすれば、微かに見えた花火の残像

窓を開け、硝煙が雲になるまで、

タバコをふかしてちっぽけな余韻に浸る

遠くに非日常がある中で

現実の私はワンルームに収まっていた


誰もが寝静まった丑三つ時

大雨降れど、朝には陽が煌めいた

窓から眺めるアスファルトには水たまりひとつない

この雨の存在を知るのは私かあやかしくらいだろう

幽霊ぐらいいてくれればいい

話相手には申し分なかった


腐った数日

誕生日はなかったことにしたかった

母に心配で泣かれながらに祝われた

なにかを始めようギターを買った

預金残高は枯れていた

出前だけがベルを鳴らす

お祝いのメッセージからはじまったトークは数日でただの宿題に変わった

描きかけのキャンバスは埃かぶって山積みに

カメラはおもちゃ箱からはみ出てた

パソコンはカバンからずっと出していない

なにをしてたしていない

中学から好きだった曲の歌詞を借りれば

息を吸って生命を食べて排泄をするだけの猿だった

部屋は徐々に汚れてく


平日がはじまった

ありもしない仕事

それでも生活は整えたかった

昼夜逆転のリセットはただ起きるだけ

ボロッボロの体でただただ起きて

最悪の睡眠をとれば

夜明けの優しい朝陽が起こしてくれた


久々に音楽でも流そうか

まだギターは届いていない

そうだこの曲を弾いてみよう

シャワーを浴びて散歩にも出かけよう

眠ったときに私は死んだ

起きたときに私は生まれた

今、私は、今日の一生を笑う

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