アイドル行進曲〜《天下無双》と呼ばれた私は、アイドル活動を辞めました。

水定ゆう

第1話 気持ちのいいお布団と共に

 気持ちのいい朝。

 カーテン越しに射す陽射しが私に降り注がれる。

 ベッド上で横になり、掛け布団で体を覆っていたけれど、顔が熱くて起き上がった。


「うーん、あっ、ふはぁー」


 私は大きな欠伸を掻いた。

 口元に手を当て、ゆっくりと伸びをする。

 背中がスッとなって気分がいい。


「あー、朝だ。よし!」


 私、天実夢芽あまみゆめは、今日も元気。

 後、こんなにも清々しい朝は久しぶり。

 毎日が忙しかった頃も楽しかったけど、これはこれで楽しい。小学生の頃を思い出してくれる。


「あっ、スマホ……梨奈さんから連絡が……来てない。そっか」


 私は急いでスマホを確認する。

 毎朝の日課というか何というか、やらないと怒られた。

 私がつい最近までいた世界では当たり前のことで、毎日ハラハラだったけど、重要な連絡なんて何も入ってなかった。


「私、もうアイドルじゃないんだよね」


 私はもうアイドルじゃない。

 こう聞くと少し悲しい気がするけど、全然私は気にしない。だって、私は私だから。夢を投げ出した訳じゃないから。


「まあ、一時的だけど」


 そうなんだよな。私は学業優先ってことで、一時的に休業しただけ。

 元々契約もフリーだったから大して問題じゃないけど、復帰するその頃には人気も無くなってると思う。

 それならそれでもいい。私は別に、キャーキャー言われてチヤホヤされるアイドルになりたいわけじゃないから。


「よーし、これからはたくさん遊んで、青春を謳歌するぞー!」


 私はカーテンを徐に開けた。

 眩しい陽射しを受ける私。

 気持ちのいい朝とはまさにこれだ。

 私は芸能界の喧騒? は、分からなかったけど、何だか楽しめそうでワクワクしていた。


「ってその前に……」


 キラキラと輝く瞳。

 毎日を楽しんでいる証拠。

 冷火は「どうしてそんなに眩しいのよ」とか言いそうだけど、私だっていつもそんなじゃない。


「夢の二度寝だー。あー、嬉しいー」


 私はもう一回ベッドに入った。

 布団を被り、起きようとしていた体を休める。こんなの、アイドルやってた頃はなかなかできなかった。昔はできたのに、忘れてたよ。


「休日って本当に天国。歌の練習もダンスレッスンも無い。私は自由だー……あっ!?」


 と思ったのも束の間。

 私は昨夜のことを思い出す。

 確か今日、お母さんは家に居ない。

 急なお仕事とか何とか言ってたし、お父さんも単身赴任中。つまり、私は家に一人だった。


「そうだよ。せっかくの日曜日。こんな日こそ、新しいものを探しに行こう!」


 私は二度寝を止めた。

 それよりももっと面白いものを探すことにする。

 私の夢を現実にするため。そう、当てもない空想を掴むため、私は毎日をエンジョイすることにした。

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