第2話 20世紀最大のミステリー

 僕は、まるで手術室で麻酔を打たれたような感じでいる。だが、不安はない。というか、採用してもらわないと明日からホームレスだ。

(皆さんは、そうなりそうなら生活保護申請してください。死にそうなら生活保護貰えます。)

「精神安定、真実の記憶への連動確認。精神を真実の記憶軸に設定。」

 遷太郎は、機械をうまく使って彼らの精神をうまく真実の記憶の流れに乗せている。

 このヒストリマシーンは、人の精神を真実の記録へ転移する装置だ。

 なに?タイムパラドックスが起きる?それについては、後に説明があるので割愛する。

 そんなことを言っていたら2人は、

 1963年11月21日 ケネディ暗殺日の前の日に真実の記録に転移した。

(うーん。なんか、睡眠薬で眠らされていた感じだ。)

 身体は、なんか、だるい。というか、なんか、身体がいつもと違うような。

「おーい。起きろ!」

 女性の声が聞こえる。ああ、ここは、天国か…

 ゲシ!

「いて!」

 いきなり蹴られた。だが、痛いが、嬉しいような気がする。

「起きたか!早く、起きろよ。さっさと調査するぞ!」

 新井さんは、オードリーヘップバーンが着ていたようなラフな服装で首にスカーフを巻いている。

「お前!けっこう似合ってんな!」

 そう言われて自分の身体を見てみると革ジャンに少し、古びたジーンズ。首には、ネックレス。昔のヤンキーか暴走族のようなスタイルだった。

「え!え?なんで?」

 僕は、驚いて何がなんだが分からなかった。

「なんだよ。社長は、なにも教えてなかったんだ?ここは、過去の事件の記憶をあのヒストリマシーンで具現化した世界。ここで行われたことは、実際にあったこと。つまり、真実がここにあるんだよ。」

 なんだ?タイムトラベルか?でも、記憶なんだからタイムトラベルではない?もう、訳が分からない。

「まあ、言ってみれば昔の世界の記録で真実を探してそれをネタに記事を書いて本を売る。これがヒストリ出版社の売りなんだよ。まあ、他の人間はオカルトだの。詐欺だの言うけど。」

 僕は、呆然としたが疑問が残った。

「けど、記憶なんてあいまいなものいくら技術や魔法があっても都合よく書き換えてしまうものでは?」

 僕は、核心をついたことを言ってしまった。新井白さんは、少し、うつむき、悲しげに僕にこう答えた。

「みんな、真実を知りたい。なのにその時の権力者や大衆の欲望で真実が塗り替えられてきた。ヒストリマシーンは、そのねじ曲げられた真実の無念を真実の記録として形にしてくれた。だから、私たちは、ここにいる。」

 新井さんは、最初は、悲しげだったが、最後は、吹っ切れたように真実を語った。

「でも、本当に真実にたどり着けますか?」

 僕は、不安だった。だって、真実を見つけないと採用されないし、ここから帰れるかも分からない。でも、新井さんは、

「最初からダメとか無理とかなんて言ってたらなにもできないだろ。さあ、行こうぜ。まずは、オズワルドが勤める会社からだ!」

 オズワルド?なんか、聞いたことある。まさか今回の事件って…新井さんは、いきなり僕の手を掴んで走り出した。

「ここから、2ブロック先にあの世界的暗殺者 リー・ハーヴェイ・オズワルドの勤める会社なある。その日は、仕事してたから取材するぞ。」

 僕は、始めて女性の手を握られて放心状態だった。しかも美人でぐいぐい来てくれる女性に。僕は、幸せでまた、心臓がバクバクしている。ずっと、新井さんといたい。こうしていたい。

 けど、確か、オズワルドってライフルぶっぱなすやばい人だよね。取材させてくれるの?

 1人は、ワクワク。

 1人は、バクバクな状態で走り続けた。

 2人はオズワルドに会えるのか?

 

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