私は泣いて、彼女は笑う。

やじるしさん

#1 みぃつけたぁ

 「...っ!」

嫌な夢を見た。昔、私が彼女に出会った日。私はひ**こ***...


 今日から私は大学生。まだ、何をやりたいか自分でもよくわかってないけど、普通の生活を送る為に、これからゆっくり考えていこう。


 「では、これで授業を終わります。」

教授の声と共に、授業を受けていた生徒達は次々と動き出す。

私も、新しい友達と帰り道について話しながら動き出す。

でもその時、聞き馴染みのある声が聞こえた気がした。


『みぃつけたぁ。』


ハッと辺を見渡すが、私に視線を向ける人はいない。気のせいかと思いながら、廊下で待つ友達の下へ走る。

「どしたん?」

「いや、何でもない。今日どこ行く?」

「次はぁ−」

これが普通。あの時とはもう違う。


 「ふぅ...」

私は疲れてヘナヘナになった自分の体を、ベッドに放り投げる。

(普通の生活って、こんなに辛いんだ。)

新生活が始まって、もう一ヶ月。楽しいっちゃ楽しいけど...

(人間関係作るのって、こんなに大変なのかぁ)

私は今まで、普通と言うか、当たり前と言うか、皆が送る日常とはまるで別物の、非日常を送っていた。


“私は彼女の命令を聞くだけの、生きた人形。”


 「優実、次はねぇ...この人っ!」

私は目を見開く。

彼女が差し出して来た紙には、私が彼女と出会う前、仲良くしていた友達の顔写真がズラリと貼られてあった。

流石に今回は抵抗したかった。だけど、彼女の顔を見た瞬間、そんな考えは消え去った。


『出来るよね?』


そんな圧がある顔で、こちらを覗いてくる。

「...実行日はいつ?」

彼女は、顔写真の下を指差した。

今から行動に移さなければならない物もある。

「じゃあ行こっかぁ」

どうやら、もう出発するようだ。

もう、諦めてしまった方が早いのだろうか。私はこの仕事をして行く中で、抵抗心や後悔といった気持ちを捨てきれずにいた。この仕事をするならば、私情を持ち込むべきではないと私自身もわかっている。

(私だって人の心ぐらい...)

人を殺している時点で、そんな事考えても無駄か。

私は彼女の後を追う。


「今回は3人同時だけど、心臓が無事なら何しても良いってぇ。」

私は彼女からサイレントピストルを受け取り、もう一度書類に目を通す。

(今回のルールは‘心臓が無事である’事。

3人の特徴は、いつも固まって行動する所。だから、3回連続で引き金を引けばすぐに終わる。)

後は、人気のない仕事場をどう用意するか。

「優実。ここ、この時間帯人気無いから大丈夫。頑張ってねぇ。」

彼女には、全てお見通しのようだ。


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