第44話 おひとり様世界
武蔵は、リンの亡骸を抱き、永遠に続くかのような旅を続けていた。彼の心は、深い悲しみと孤独に覆われていた。竜鱗の鎧は、彼に不死の力を与えたが、同時に、彼を人間から隔絶した。彼は、人々の畏怖の対象となり、安らぎを得られる場所はどこにもなかった。
ある日、武蔵は、深い霧に覆われた森に迷い込んだ。その森は、「おひとり様世界」と呼ばれる、孤独な魂が集まる場所だった。そこには、過去に深い悲しみや絶望を経験し、人間との繋がりを絶った者たちが暮らしていた。
武蔵は、彼らと出会い、共に暮らすようになった。彼らは、武蔵の孤独を理解し、彼を受け入れた。武蔵もまた、彼らと過ごすうちに、少しずつ心の傷を癒していった。
しかし、武蔵の心には、常にリンの面影が焼き付いていた。彼は、リンの魂が安らかに眠れる場所を探し求め、旅を続けることを決意した。
「おひとり様世界」の住人たちは、武蔵の決意を尊重し、彼を送り出した。武蔵は、再び孤独な旅に出た。彼の旅は、リンの魂を探す旅であると同時に、彼自身の魂を探す旅でもあった。
武蔵は、様々な場所を訪れ、様々な人々と出会った。その中で、彼は、孤独とは何か、愛とは何か、生とは何かを深く考えた。彼は、リンとの思い出を胸に、孤独な世界で生きる人々との出会いを通して、少しずつ人間性を取り戻していった。
そして、長い旅の末、武蔵は、リンの魂が安らかに眠れる場所を見つけた。それは、かつてリンと二人で訪れた、美しい花畑だった。
武蔵は、リンの亡骸を花畑に埋葬し、静かに手を合わせた。彼の心には、悲しみだけでなく、安堵と感謝の気持ちが溢れていた。
「リン、やっと安らかに眠れる場所を見つけたよ。俺も、いつかお前のそばに行くだろう。それまで、もう少しだけ、この世界で生きてみるよ」
武蔵は、そう呟き、花畑を後にした。彼の旅は、まだ終わらない。彼は、リンの魂と共に、この世界で生きていくことを決意したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます