第28話 剣聖、希望を求めて

 現代の東京。未曾有の感染症が猛威を振るい、街は死の影に覆われていた。佐々木武蔵は、剣の腕を活かし、人々を守り、医療物資を運搬する日々を送っていた。しかし、感染症の勢いは止まらず、武蔵の仲間や親しい人々も次々と倒れていった。

そんな中、武蔵は一つの噂を耳にする。

「土岐…?一体、何者だ?」

 それは、土岐という名の医者の噂だった。土岐は、感染症の治療に剣術を取り入れているという。当初、武蔵はその噂を一笑に付したが、藁にもすがる思いで土岐について調べ始めた。

 調べを進めるうち、武蔵は土岐が単なる医者ではないことを知る。土岐は、剣術の達人であり、独自の治療法を持つ天才的な医者だった。土岐は、感染症の原因を「人の心の弱さ」にあると考え、剣術で心身を鍛えることで免疫力を高め、感染症を克服しようとしていた。

「剣術で病を治す…?そんなことが可能なのか?」

武蔵は半信半疑だったが、土岐の治療法に興味を抱き、彼に会うことを決意する。武蔵は、土岐の居場所を突き止め、彼の診療所を訪れた。

 診療所は、街の外れの古い武道場の中にあった。中に入ると、道場の中央で、土岐が患者に剣術の型を教えていた。患者たちは、真剣な表情で剣を振るい、汗を流していた。

「あなたが土岐先生ですか?」

 武蔵が声をかけると、土岐は剣を止め、武蔵の方を向いた。土岐は、年齢不詳の男だった。その目は、鋭く、奥底に深い知恵を秘めているようだった。

「私が土岐だ。あなたは…?」

「佐々木武蔵。あなたの治療法に興味があり、話を聞きに来ました」

 武蔵が答えると、土岐は微笑んだ。

「ようこそ、武蔵殿。私の治療法は、剣術と医学を融合させたものだ。剣術で心身を鍛え、免疫力を高めることで、感染症を克服する。そして、剣術を通して、人は心の弱さを克服し、強く生きることができる」

 土岐は、武蔵に自身の治療法を詳しく説明した。武蔵は、土岐の言葉に感銘を受け、彼に協力を申し出る。

「私も、あなたと共に戦いたい。剣術で、人々を救いたい」

 武蔵の申し出に、土岐は頷いた。

「共に、この世界を救おう」

 こうして、武蔵と土岐は、感染症との新たな戦いを始めた。剣と医学、二つの力が合わさり、人々に希望をもたらす。


 湯田ゆたはサザンクロス出版の社長秘書だ。サバイバルゲームの参加者の堀田和泉が気になっていた。

 堀田和泉ほりたいずみは石井を倒す為に、サザンクロス出版のイベントに参加していた。石井は和泉の父親、一郎をパワハラで自殺に追い込んだ鬼だ。石井は西浦印刷会社の製造課長だ。


 サザンクロス出版のイベント会場は、熱気に満ち溢れていた。人気作家のサイン会、トークショー、そして最新刊の先行販売。堀田和泉は、その喧騒の中に身を置きながら、冷静に周囲を観察していた。彼女の目的は、ただ一つ。父、堀田一郎を死に追いやった男、石井を見つけ出し、復讐を果たすことだった。

 石井は、西浦印刷の製造課長であり、サザンクロス出版とは長年の取引関係にあった。今日のイベントにも、印刷会社側の代表として参加しているはずだ。和泉は、父の同僚から提供された石井の顔写真を手に、会場内をゆっくりと移動した。

「石井…必ず見つけ出して、お父さんの無念を晴らしてみせる」

 和泉は、心の中でそう呟き、目を光らせた。その時、彼女の目に、写真の男と瓜二つの人物が飛び込んできた。彼は、屈強な体格で、鋭い眼光を放ち、周囲を威圧するような雰囲気を纏っていた。

「間違いない…あれが石井だ」

 和泉は、確信し、男に近づこうとした。しかし、その時、彼女の携帯電話が鳴り響いた。画面には、「石井一郎」と表示されていた。和泉は、驚きを隠せず、電話に出た。

「もしもし?」

「和泉か?…お父さんだよ」

 電話の向こうから聞こえてきたのは、紛れもない父、一郎の声だった。和泉は、耳を疑った。

「お父さん…?生きてたの?」

「ああ、まあ色々とあってな。それより、和泉、石井に近づくな!」

 一郎の声は、切羽詰まった様子だった。

「どういうこと?石井は、お父さんを…」

「それは誤解だ。石井は、お前が思っているような人間じゃない。それより、今は時間がない。とにかく、石井に近づくな。さもないと、お前も危険な目に遭う」

 一郎は、そう言い残し、電話を切ってしまった。   和泉は、混乱した。一体、何がどうなっているのか。石井は本当に父の仇ではないのか。それとも、父は何か別の危険に巻き込まれているのか。

 その時、背後から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「堀田和泉さん、ですよね?」

 振り返ると、そこには、先ほど見かけた石井が立っていた。彼は、先ほどまでの威圧的な雰囲気とは打って変わり、穏やかな笑みを浮かべていた。

「あなた…石井さん?」

 和泉は、警戒しながら尋ねた。

「ええ、そうです。少し、お話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 石井は、そう言い、和泉を会場の隅へと案内した。そこで、彼は、和泉に衝撃的な事実を告げた。

「堀田さん、あなたのお父さんは、私が殺したわけではありません。むしろ、私は、彼を救おうとしていました」

 石井は、そう言い、和泉に一枚のUSBメモリを手渡した。

「これには、全てが記録されています。あなたのお父さんが、なぜ死ななければならなかったのか。そして、誰が、彼を死に追いやったのか」

 和泉は、戸惑いながらも、USBメモリを受け取った。彼女は、まだ、石井を完全に信用することはできなかった。しかし、彼の言葉には、真実が含まれているような気がした。

「一体、誰が…?」

 和泉が尋ねると、石井は、静かに答えた。

「それは、あなた自身で確かめてください」

 石井は、そう言い残し、会場を後にした。和泉は、USBメモリを手に、会場を後にした。彼女は、真実を確かめるために、そして、父の無念を晴らすために、戦うことを決意した。


 そこで夢から覚めた。和泉は石井を倒す為に一定期間不死身になれる鎧、竜鱗りゅうりんの鎧が必要だった。サザンクロス出版主宰のサバイバルゲームに勝てば手に入る。

 テーマは宮本武蔵だ。

 堀田和泉は自宅アパートで、パソコンの画面を睨みつけていた。

「うーん、どれもイマイチね…」

 和泉は、これまで思いついたタイトルを、画面に表示されたリストから削除していった。

* 『剣豪武蔵異聞』

* 『孤高の剣、武蔵』

* 『武蔵、乱世を斬る』

「もっと、こう、心に響くような、斬新なタイトルはないかしら…」

 和泉は、頭を抱え、考え込んだ。その時、ふと、彼女の目に、机の上に置かれた一冊の古書が飛び込んできた。それは、父、堀田一郎の遺品の一つだった。

「お父さんの本…」

 和泉は、古書を手に取り、ページをめくった。そこには、宮本武蔵に関する記述が、数多く記されていた。

「…武蔵は、生涯、六十余度の勝負を重ね、一度も敗れることがなかった…」

 和泉は、その記述に目を奪われた。彼女は、武蔵の生き様に、強い感銘を受けた。

「…そうだ、この感じ…」

 和泉は、インスピレーションが湧き上がるのを感じた。彼女は、パソコンに向かい、キーボードを叩き始めた。

「タイトルは…『隻影の剣豪、武蔵』。どうかしら?」

 和泉は、タイトルを画面に表示し、自問自答した。

「…悪くない。でも、もう少し、インパクトが欲しいわね」

 和泉は、再び考え込んだ。その時、彼女の目に、部屋の隅に置かれた、一本の刀が飛び込んできた。それは、父、一郎が愛用していた模造刀だった。

「お父さんの刀…」

 和泉は、刀を手に取り、鞘から抜いた。刀身は、月明かりを反射し、妖しく光り輝いていた。

「…この刀のように、鋭く、そして美しいタイトル…」

 和泉は、刀身を見つめながら、考えを巡らせた。その時、彼女の脳裏に、一つの言葉が浮かび上がった。

「…そうだ、『月影』…」

 和泉は、パソコンに向かい、キーボードを叩き始めた。

「タイトルは…『月影の剣豪、武蔵』。これなら、どうかしら?」

 和泉は、タイトルを画面に表示し、満足そうに頷いた。

「…これよ、私が求めていたタイトルは」

 和泉は、完成したタイトルを、編集担当者に送信した。彼女は、このタイトルが、多くの読者の心を惹きつけることを確信していた。


『月影の剣豪、武蔵』

 関ヶ原の地は、今まさに天下分け目の戦いを迎えようとしていた。西軍の総大将は、義に厚く、戦国最強と謳われた上杉謙信。その下には、石田三成、真田昌幸・信繁(幸村)父子、毛利輝元、宇喜多秀家、大谷吉継、島津義弘、長宗我部盛親、小西行長など、錚々たる武将たちが集結していた。

 一方、東軍を率いるのは、天下を狙う徳川家康。その陣営には、本多忠勝、井伊直政、福島正則、黒田長政、加藤清正、細川忠興、藤堂高虎といった、こちらも屈強な武将たちが名を連ねていた。

 戦場には、両軍合わせて十万を超える兵がひしめき合い、静かなる殺気が戦場を支配していた。


 武蔵、関ヶ原へ

 そんな中、一人の剣豪が関ヶ原へと向かっていた。その男こそ、宮本武蔵。彼は、上杉謙信の義に惹かれ、西軍に加勢するため、単身で戦場へと乗り込んだ。

 武蔵は、関ヶ原へと向かう道中、様々な武将たちと出会う。真田昌幸・信繁父子の知略と武勇、島津義弘の鬼神の如き戦いぶり、そして、大谷吉継の友情と覚悟。

 彼らの生き様に触れた武蔵は、自身の剣が、ただ人を斬るためのものではないことを悟り始める。


 関ヶ原、開戦

 ついに、関ヶ原の戦いが始まった。両軍の兵が激突し、戦場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。武蔵は、刀を手に、戦場を駆け巡り、西軍の兵たちを鼓舞した。

 しかし、戦況は徐々に東軍優位へと傾いていく。東軍の鉄砲隊が西軍の陣を蹂躙し、本多忠勝、井伊直政らの猛攻が西軍を追い詰めた。


 武蔵、決意

 武蔵は、上杉謙信の陣へと向かい、彼に告げた。

「謙信公、もはやこれまで。ここは、私が引き受けます。どうか、ご退却を」

 謙信は、武蔵の言葉に頷き、退却を決意する。武蔵は、単身で東軍の猛攻に立ち向かい、謙信たちの退却を援護した。


 決着、そして

 武蔵の奮闘も虚しく、西軍は敗北を喫した。上杉謙信は、生き残った兵たちと共に、関ヶ原を後にした。武蔵は、深手を負いながらも、その場に立ち尽くしていた。

 東軍の武将たちが、武蔵を取り囲む。しかし、彼らは、武蔵の剣技と覚悟に敬意を表し、彼を生かして帰すことを決めた。

 武蔵は、再び一人、旅に出る。彼の心には、関ヶ原で出会った武将たちの生き様が深く刻み込まれていた。


登場武将

* 西軍

* 上杉謙信

* 石田三成

* 真田昌幸

* 真田信繁(幸村)

* 毛利輝元

* 宇喜多秀家

* 大谷吉継

* 島津義弘

* 長宗我部盛親

* 小西行長

* 東軍

* 徳川家康

* 本多忠勝

* 井伊直政

* 福島正則

* 黒田長政

* 加藤清正

* 細川忠興

* 藤堂高虎


 

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