第5話 親鸞との出会い、又八の裏切り

 村での生活は、相変わらず困難を極めていた。しかし、武蔵たちは、村人たちの信頼を得るために、地道な努力を続けていた。

 そんなある日、武蔵は、村の外れの小さな庵で、一人の老人と出会った。老人は、穏やかな笑みを浮かべ、武蔵に話しかけた。

「あなたは、武蔵さんですね。私は、親鸞と申します」

 武蔵は、老人の名前に聞き覚えがあった。彼は、かつて旅の途中で、親鸞という名の僧侶の話を聞いたことがあった。

「あなたは、あの親鸞様ですか?」

 武蔵は、驚きを隠せなかった。

「はい、そうです。私は、この地で、念仏の教えを広めています」

 親鸞は、穏やかに答えた。

 武蔵は、親鸞に、自分の過去と、村での生活について話した。親鸞は、武蔵の話を静かに聞き、優しく語りかけた。

「武蔵さん、あなたは、過去の罪に苦しんでいるのですね。しかし、過去は変えられません。大切なのは、今、そして、これから、どのように生きるかです」

 親鸞の言葉は、武蔵の心に深く響いた。彼は、過去の罪に囚われ、未来を見失っていたことに気づかされた。

「親鸞様、私は、どのように生きればいいのでしょうか?」

 武蔵は、親鸞に尋ねた。

「武蔵さん、あなたは、既に答えを知っています。あなたは、人を救いたいと願い、そのために行動してきました。その心を、これからも持ち続けてください」

 親鸞は、武蔵の目をじっと見つめ、言った。

「しかし、私は、人を傷つけ、不幸にしてきました。私には、人を救う資格などありません」

 武蔵は、自嘲気味に言った。

「武蔵さん、あなたは、過去の過ちを悔い、償おうとしています。それこそが、あなたを救う道です。あなたは、過去の罪を背負いながらも、人を救うことができるのです」

 親鸞の言葉は、武蔵の心を温かく包み込んだ。彼は、親鸞の言葉に、救われたような気持ちになった。

「親鸞様、ありがとうございます。私は、あなたの言葉を胸に、これからも生きていきます」

 武蔵は、親鸞に深く感謝した。

 親鸞は、武蔵に、念仏の教えを説いた。それは、どんな罪を犯した者でも、阿弥陀仏の救いにあずかることができるという教えだった。

 武蔵は、親鸞の教えに感銘を受け、念仏を唱えるようになった。彼は、念仏を唱えることで、心の安らぎを得ることができた。

 武蔵は、親鸞との出会いを通じて、過去の罪と向き合い、未来へと進む力を得た。彼は、親鸞の教えを胸に、村人たちと共に、平和な生活を送ることを決意した。


 本位田又八は、宮本武蔵の幼馴染でありながら、その生涯において武蔵との関係は複雑に変化した。

 特におつうを巡る三角関係は、両者の友情に深い影を落とした。

 又八とおつうは、武蔵と同一の村で成長し、幼少の頃より互いを知悉していた。武蔵もまた、おつうに惹かれていたが、武者修行の旅に出ることを選択し、三者の間に距離が生じた。

 又八は、武蔵が村を離れた後、おつうに積極的に接近し、彼女の心を掴もうと試みた。しかし、おつうの心には常に武蔵の存在があり、又八の想いは成就しなかった。

 武蔵が再び村に戻った際、又八はおつうへの想いを断念しきれず、武蔵への嫉妬と憎悪を増幅させていた。そして、遂に又八は、武蔵を裏切り、おつうを奪うという行動に出た。

 又八は、武蔵をおつうから遠ざけ、彼女を自身の所有物にしようと画策した。しかし、おつうの心は武蔵から離れることはなく、又八の行動は彼女を苦しめる結果となった。

 又八の背信は、武蔵との友情に決定的な亀裂を生じさせた。武蔵は、又八の行動に深く失望し、両者の関係は修復不可能となった。

 その後、又八は自身の過ちを悔悟し、おつうへの執着を放棄したが、武蔵との関係が旧に復することはなかった。


 佐々木武蔵はコラムを連載するようになった。

『吉川英治の小説「宮本武蔵」における又八』

 吉川英治の小説「宮本武蔵」において、又八は武蔵の対比として描かれている。武蔵が剣の道に邁進し、精神的に成長していく一方で、又八は欲望や嫉妬に囚われ、人間的に堕落していく様が描出されている。

 又八の背信とおつうを奪う行為は、武蔵の成長を促すための試練として描かれており、物語の重要な要素となっている。

 補足

* 又八、おつう、武蔵の関係には、多様な解釈が存在する。

* 吉川英治の小説「宮本武蔵」は、あくまで小説であり、史実とは異なる部分が存在する。

* 又八の人物像は、時代や解釈によって様々に変容し、現代においても議論の対象となっている。


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