MFブックス異世界小説コンテスト  おひとりさま タイトル:隻腕の剣鬼、異世界を往く 10万字以上

鷹山トシキ

第1話 異世界召喚

「ここは…?」

 気がつくと、武蔵は見たことのない場所に立っていた。そこは、緑豊かな森林に囲まれた、幻想的な場所だった。

「ここは、異世界…?」

 戸惑う武蔵の前に、一人の老人が現れた。

「おお、勇者よ。よくぞ参られた」

 老人は、武蔵を「勇者」と呼んだ。

「勇者…?俺が…?」

 老人は、武蔵にこの世界の説明をした。ここは、剣と魔法が支配する世界であり、魔王の脅威に晒されているという。そして、武蔵は、この世界を救うために召喚された勇者だという。

「俺が、この世界を救う…?そんなこと、できるのか…?」

 武蔵は、戸惑いながらも、老人の言葉に耳を傾けた。

「勇者よ、あなたには、この世界を救う力がある。あなたの剣は、魔王をも打ち倒すことができるでしょう」

 老人の言葉に、武蔵は心を決めた。

「わかった。俺は、この世界を救う。俺の剣で、魔王を倒す」

 武蔵は、異世界での生活を始めた。彼は、まず、この世界の剣術を学ぶことにした。しかし、彼は隻腕であるため、通常の剣術を使うことができなかった。

「俺は、隻腕でも戦える剣技を編み出すしかない…」

 武蔵は、試行錯誤を繰り返し、独自の剣技を編み出した。それは、隻腕でも最大限の力を発揮できる、無駄のない剣技だった。

「この剣技なら、俺は誰にも負けない…」

 武蔵は、自信を持って、旅に出た。彼は、魔王を倒すために、仲間を探し、力をつけた。


 旅の途中、武蔵は様々な人々と出会い、仲間を増やしていった。彼らは、それぞれの得意分野を活かし、武蔵をサポートした。

そして、ついに、武蔵は魔王と対峙する。魔王は、強大な力を持っていたが、武蔵は、仲間たちとの連携と、独自の剣技で、魔王を追い詰めていく。

「俺の剣は、誰にも止められない…!」

激しい戦いの末、武蔵は魔王を打ち倒した。世界は平和を取り戻し、武蔵は英雄として称えられた。


 「俺は、この世界で、自分の剣を見つけた。隻腕でも、俺は最強の剣士だ」

 武蔵は、異世界での戦いを終え、元の世界へと帰還した。彼は、隻腕となっても、なお、剣を極め続けることを決意した。

「俺の剣は、まだまだ終わらない。俺は、これからも、剣の道を突き進む」


 佐々木武蔵は『隻腕の剣鬼』を書いている。

 彼は佐々木小次郎の末裔だ。

 佐々木武蔵は、昼は都内のIT企業で派遣社員として働き、夜は自宅で『隻腕の剣鬼』を執筆する日々を送っていた。彼は、宮本武蔵の魂が憑依した男でありながら、佐々木小次郎の末裔でもあった。

「何故、私が武蔵と小次郎、二つの宿命を背負っているのか…」

 武蔵は、自らの宿命に疑問を感じながらも、『隻腕の剣鬼』の執筆に没頭していた。彼は、宮本武蔵と佐々木小次郎の戦いを、客観的に、そして、現代人の視点から描こうとしていた。

 しかし、武蔵の執筆は、単なる歴史小説の執筆ではなかった。それは、彼自身の魂の探求であり、宮本武蔵と佐々木小次郎、二つの魂との対話でもあった。

 ある夜、武蔵は、夢の中で、宮本武蔵と佐々木小次郎に出会った。

「貴様は、我らの戦いを、如何に描こうというのか」

 宮本武蔵は、武蔵に問いかけた。

「私は、貴方たちの戦いを、憎しみではなく、愛の物語として描きたいのです」

 武蔵は、そう答えた。

「愛だと…?我らの戦いに、愛など存在せぬ」

 佐々木小次郎は、嘲笑した。

「いいえ、愛は存在します。貴方たちは、互いを憎み合いながらも、互いを認め、尊敬していた。それは、愛の形の一つではないでしょうか」

 武蔵の言葉に、宮本武蔵と佐々木小次郎は、沈黙した。

「貴様は、我らの戦いを、現代に蘇らせようというのか」

 宮本武蔵は、再び、武蔵に問いかけた。

「いいえ、私は、貴方たちの戦いを、過去の出来事としてではなく、現代に生きる人々の教訓として描きたいのです」

 武蔵は、そう答えた。

「教訓…だと?」

 佐々木小次郎は、眉をひそめた。

「そうです。貴方たちの戦いは、現代に生きる私たちに、多くのことを教えてくれます。憎しみではなく、愛を。争いではなく、平和を。そして、孤独ではなく、繋がりを」

 武蔵の言葉に、宮本武蔵と佐々木小次郎は、静かに頷いた。

「貴様の言葉、しかと受け止めた。我らの戦いを、貴様の思うように描くが良い」

 宮本武蔵は、そう言い残し、姿を消した。

「貴様の言葉、信じよう。我らの戦いが、現代の人々の心に響くことを願う」

 佐々木小次郎も、そう言い残し、姿を消した。

武蔵は、夢から覚め、再び、『隻腕の剣鬼』の執筆に取り掛かった。彼の心には、宮本武蔵と佐々木小次郎の魂が宿り、彼らの言葉が響いていた。

 武蔵は、宮本武蔵と佐々木小次郎の戦いを、愛と平和の物語として描き続けた。それは、彼自身の魂の探求であり、現代社会へのメッセージでもあった。


 佐々木武蔵は、都内での派遣社員としての仕事と、『武蔵伝』の執筆に追われる日々を送っていた。しかし、ある日、彼は気分転換と取材を兼ねて、横須賀への旅に出ることを決意した。

「横須賀か…軍港の街、そして、異国情緒溢れる街。何か新しい発見があるかもしれない」

 武蔵は、そう呟き、リュックサックを背負って、電車に乗り込んだ。

 横須賀に到着した武蔵は、まず、三笠公園を訪れた。そこには、かつての戦艦三笠が展示されており、その雄姿に、武蔵は圧倒された。

「戦艦…か。戦国時代の戦とは、全く異なるものだな」

 武蔵は、そう呟きながら、戦艦三笠を見学した。

次に、武蔵は、横須賀美術館を訪れた。そこでは、横須賀の歴史や文化に関する展示が行われており、武蔵は、興味深く見学した。

「横須賀は、様々な文化が混ざり合った街なのだな」

 武蔵は、そう呟きながら、展示物を見て回った。

夕方になり、武蔵は、ドブ板通りを訪れた。そこは、アメリカ文化が色濃く残る街であり、多くのバーやレストランが立ち並んでいた。

 武蔵は、その中のバーに入り、カウンターに座って、バーテンダーに話しかけた。

「この街は、面白いですね。まるで、異国に来たみたいだ」

 武蔵がそう言うと、バーテンダーは、笑顔で答えた。

「そうでしょう?横須賀は、昔から、色々な文化が混ざり合っている街なんですよ」

 バーテンダーは、横須賀の歴史や文化について、武蔵に語ってくれた。

 武蔵は、バーテンダーの話に聞き入りながら、横須賀の魅力を感じていた。

 その夜、武蔵は、カプセルホテルに宿泊した。彼は、狭いカプセルの中で、今日一日の出来事を思い返していた。

「横須賀は、戦艦、美術館、ドブ板通り…様々な顔を持つ街だ。そして、そこに住む人々も、多様な背景を持っている。この街で、私は、何を学ぶのだろうか…」

 武蔵は、そう考えながら、眠りについた。

 翌日、武蔵は、猿島を訪れた。そこは、東京湾に浮かぶ無人島であり、かつての要塞の跡が残っていた。

 武蔵は、島を散策しながら、要塞の跡を見学した。

「この島も、また、横須賀の歴史を物語っているのだな」

 武蔵は、そう呟きながら、島を後にした。

 横須賀の旅を終えた武蔵は、電車に乗り、都内へと戻った。彼の心には、横須賀で得た様々な経験が、深く刻まれていた。

 そして、武蔵は、横須賀での経験を、『武蔵伝』の執筆に活かそうと決意した。

「横須賀で出会った人々、そして、横須賀の歴史と文化。それらを、『武蔵伝』の中に、どのように織り込んでいこうか…」

 武蔵は、そう考えながら、自宅へと向かった。


 

 

 

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