偶然

 一瞬で寝落ちして、うなされて落ち着いたと思いきや、いきなりガバッと起き上がる心愛さん。

 

 

「うおっ⁉︎」

「えっ⁉︎だれ?てか今何時⁉︎やばい‼︎学校遅刻‼︎」

 と大慌てしていた。

 

「あ、ここそもそも学校だし…」

「あー、なるほど……ねー……てか、あなた……」

 

 

 …

 

 オレの顔みて、さっきの辛いことまた思い出しちゃったよねー…って思っていたら、案の定

「そういえばわたし…フラれたんだっけねー‼︎ま、寝たらリセットされてどうでもよくなっちゃったー」

 って伸びをしていた。

 

 回復はやっ‼︎

 

 ほんの数分で回復って…ゲームでもあるまいし…。

 

 まぁ、でもよかった。

 

「あ、そうだ‼︎ツル」

 

 ⁇

 いきなりのツル発言されましたよ?

 

「ツル?オレはツルではありませんけど…」

「あはは、あ…そういえば名前聞いてなかったかも」

 

 ⁉︎

 

 オレは一瞬ドキッとした。

 

 今…あははと笑ったとき、この人…

 

 笑った顔がめっちゃかわいかった…

 

 …というか、オレ…この一瞬で一目惚れしたっぽい

 

 ドキドキしながらオレは自己紹介した。

 

「オレは二年の塩崎良吾しおざきりょうごです」

「塩崎のりょうちゃんだね!よろしくね。早速なんだけど、恩返しがしたいから塩崎くんの連絡先教えてもらえない?」

「え…いえ、恩返しだなんて大丈夫っす」

「ううん、させて。てかさ…気晴らしに一緒にご飯行かない?爆食いしたいからさ」

「爆食い…っすか。いいですね、オレもこれからバイトするんで、パーっとどっかいきましょう」

「え?バイト?」

「はい、そこの角のコンビニで。」

「え〜、わたしそこでバイトしてるんだよー、すごい偶然」

「マジっすか。じゃあ、これからよろしくおねがいします。」

「こちらこそ、お願いしますだよー」

 と、笑顔でよろしくの挨拶を交わした。

 

 

 心愛さんに少し笑顔が戻って、安心した。

 

 先生がそのあとすぐに戻ってきたから、オレは教室に戻ろうとしたんだけど、心愛さんも回復したから教室戻るって元気に復活していた。

 

 …めっちゃ強っ‼︎

 

 あの涙は、一瞬だったっぽい。

 

 教室まで送ろうとしたけど、余裕と言って先輩は、かえっていった。

 

 

 

 それからすぐ、オレたちはバイトで再開した。

 

 

 心愛さんは、眼鏡をかけていた。

 

 あのときは、泣いていたから眼鏡を外していたそうな。

 

 でさ…身長もなんだか…低そうって思ってたけど、ただ猫背がひどいだけっぽい。

 

 オレの身長は、ひゃくななじゅうはち。

 

 で、心愛さんは…ひゃくごじゅうくらいかと思ったけど、ひゃくろくじゅうくらいありますね。

 

「あの、先輩は…なんでそんなに猫背なんですか?」

「あー、だって…なんか姿勢いいと…わたしみたいなやつがってなるじゃない。邪魔くさいでしょ?」

「いや、そんなことないと思います」

「ほんと?」

「はい。それに肩凝りません?」

「めっちゃ凝るよー」

「なら、もっと凛とした方がいいですよ。猫背だと内臓も潰れますから」

「えっ、それはヤダ〜」

「ですよね。だから、オレも姿勢よくするように心がけてるんです」

「そうなんだ。なら、わたしもこれからそうする」

 

 

 心愛さんは、とても前向きな人だった。

 

 

 バイトは、初めから心愛さんと一緒だったから、なんだかすぐに馴染めたし、とてもありがたかった。

 

 

 で…

 

 心愛さんって、よく化粧品コーナーの棚を整えているように見受けられる。

 

「ゔーん…やっぱりわからん」

 心愛さんは、オレンジ色の化粧品を棚に戻していた。

 

 

「化粧品がコンビニでも買えるっていいですよね。」

「あ、塩崎くんか。化粧品ってさ…ありすぎて迷うんだよね。ま、そもそもわたし化粧しないけどさ。」

「心愛さんは、ブルベが似合うかと」

 

 …

 

「えっ?ブルベ⁇」

 

 キョトンとする心愛さん。

 

「イエベとかブルベってあるじゃないですか。心愛さんはオレ的に、こっちの方がよくお似合いかと」

 

 …

 

「あー、色?」

「はい、イエローベースかブルーべースか、みたいな。」

 

 …

 

「え、男の子なのに詳しいね」

「実は…ここだけの話、オレ休日はメイクしてて…っていうかほぼ強制で…姉貴の付き合いで…」

「えー、いいなぁ」

 

 いいんだ…⁇

 

 

 ‼︎

 

 いいことを思いついてしまった‼︎

 

「あの、よかったら今度うちに来ません⁉︎」

「塩崎くんちに?」

「はい、姉がメイクレッスンしてて女の子の顔をメイクしたいってぼやいてて…オレじゃ肌質が…とか、母親も肌のノリが…とかいつも言ってまして…」

「やりたい‼︎メイク、勉強したい‼︎」

 と心愛さんは、目を輝かせていた。

 

 なので来週早速メイクレッスンして、そのあとお礼の爆食に行こうとなった。

 

 

 その日の夜、オレは優雅に熱々のコーヒーを一口くぴりと飲んで、読書をした。わけない‼︎

 

 速攻で家に帰り、部屋の大掃除をしたよね。

 

 姉貴の部屋でメイクレッスンするから、オレの部屋には心愛さんは入らないと思うけど、でも一応ね。

 

 一応掃除しなきゃだよねってことで大掃除いたしました。

 

 

 オレの部屋が心愛さんにとってのいい場所になれば…

 

 なんて少し思ったけど…心愛さんは彼氏にひどいフラれかたをしたから、当分だれとも付き合わないんだろうなー。

 

 ましてや、オレ年下だから…対象外の可能性ありありだろうなぁ…。

 

 てか、オレ今日…勝手に心愛さんって呼んでしまったけど、いいのかな?

 

 その呼び方やめれって言われるまで、そのままでいいんかな?って考えたよね。

 

 そんなことを思いながら、寝落ちするのでありました。

 

 

 続く。

 

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