【TS悪役転生】名前のない魔法少女

仏化(いむいひ)

第0話 前日の夜明け

爆音が飛び交う街を、俺は少女と一緒に走っている。


「なんでだよ!なんで今、魔法少女がこの街を壊してるんだよ!おかしいだろ!」


 このイベントが発生するのは2年後のはずだ。そもそも今の段階で魔法少女がこの拠点を知っているわけがない。


「ねぇ、ヨツハ。静かにして、敵に気づかれちゃう」


「そ、そうだな…ごめん、ニイナ」


 俺はニイナの手を強く握りしめる。5年後の未来で、ニイナは生きてた。きっと大丈夫なはずだ。


「あっ、そういえばヨツハって未来がわかるって言ってたよね。その能力で何とかならない?」


 私の未来予知はゲームでの知識を前提にしたものなのだが、そういう能力と言うことにしている。


「ごめん、今回は分からない」


「いいよ、謝らなくても。私たちは”友達”なんでしょ?」


「そうだけど…」


今日、この作戦を実行したのは私だ。施設から逃げ出すことを提案したのも私だ。少なくとも責任は私にある。


「友達は、『気を遣わなくても、傍にいてくれる人』って教えてくれたのはヨツハだよ?」


「……そうだったな。ありがとう」


 やっと笑った、と笑う彼女はまるで天使のようだった。何故こんなにも可愛いくて良い子が、悪役だったのか全く分からん。


その瞬間、自分の隣を瓦礫が通り抜けた。


「あっぶな!こんなとこ早く逃げ……よ……」


 瓦礫からニイナに視線を戻すと、彼女が地面に手をついて、血溜まりを作っていた。

 さきほどの瓦礫が彼女の脇腹を貫いたらしい。


「先に……逃げて…」


「あ…ぁ」


やっと実感した。これはゲームなんかじゃない


現実だ。



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Butterfly Magic バタフライ マジック


 それは、幻想生物に囚われた滅亡世界で戦う魔法少女達と司令者オペレーターである主人公の成長を描いたゲームだ。


 今世紀最大の鬱ゲーなんて呼ばれているが、私は世界観やキャラクターがハマり、すぐに虜になった。

 もちろん、ゲームシステムも面白い。簡単に言ってしまえばRPGとアドベンチャーが上手く融合されていて、エンディングが死ぬほどある、やり込み前提のゲームだ。(スチルも大量)

 

 これだけ聞けば素晴らしいゲームだが、エンドが60個もあるが故、フラグ管理が超大変。

 狙ってやらないと望んだエンディングやスチルはまず見れない。


 だが今日俺は、そんな鬼畜鬱ゲーの全エンドをコンプしたのだ。(もちろんスチルや装備品も全コンプ)

 そして何より、長い間欠番だったバッドエンド27番を見つけたのだ。まあ ヒロイン全員が死ぬとかいうバッドエンドだったけど……でも嬉しい!……嬉しいったら、嬉しいんだ(泣)


 そういえば、新しい発見があったな。


 街の結界を破壊することが目的の、秘密組織バイデッドの魔法少女ニイナの回想。


 まあ、あの境遇なら悪堕ちもしょうがない気がするし、多少のことは許せる。数々のヒロインを殺していることは許せないけど。


 後、ヨツハちゃん。ニイナの覚醒素材みたいな立ち位置だったけど、可愛かったな……

 正直、回想だけってのが勿体無いくらい。


 そんな時、画面が明るく光りだした。


〈全進捗達成おめでとうございます。達成報酬を受け取りますか?  はい いいえ  〉


「お!報酬あるんだ!」


ハッピーエンド追加とかだったらいいな。今のところハッピーエンドっていうハッピーエンドないし。


「もちろん『はい』っと。」


〈本当に受け取りますか?  はい いいえ  〉


ここで、いいえ押すやついるのか?メリットしかないだろ。


迷わず『はい』を押す。


〈⚠本当に?  はい  いいえ  〉


「だから、『はい』だ………っ…て」


ドタン


急に力が入らなくなり、床に頭を打った。


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