約束
「どうして無視したし」
制服姿のままの瑞が目の前にいる。
普段と変わらないはずなのにどこか大人っぽい雰囲気のある違和感。
つんつうと頭を人差し指で刺すとかやっていることは普段と同じバカみたいなことなのに、どうしてか白夜は分かりやすく目を泳がせてしまった。
謎にいい匂いなのがなぜか余計に腹が立つ。
「別に無視してないけど」
「だって目があったじゃんか」
「それは……後ろの看板が気になっただけだし」
「会った場所は分かるんだ」
「む」
どうにかして無実を証明しようにも実際に有罪なのだから出来るわけがない。何回かの問答で有罪は確定的になってしまった。無念。
「ねー目を逸らさないで欲しいんだけど」
「…………」
目を合わせないで欲しいんだけど、とは流石に言えない。かといって今の瑞を相手に合わせることなんてできるわけがない。
気まずい。
どうにかして話題を変えないと。
白夜は目を泳がせながらも頭の四方八方からネタを探し回った。しかしどれもこれもバレーやゲームのことばかり、前に話した時は真面目に聞いてくれたとは言えこの状況を打開できるとは到底思えない。
何も言えず、目も合わせられないまま睨み付けるぐらいしかできなかった。瑞も気まずいと思ったのかは分からないが話題を変える一言を呟く。
「だけど傷ついちゃったから今度一緒にカフェに遊びに行きたいなー」
しかしその一言は決して助け船なんかではなくむしろ追い打ち。
今家の中ですら瑞とちゃんと会話出来ていない白夜がこのまま外で気楽に遊べるはずがない。
誰かに見られでもしたらどうする?
まだ強面の先輩とバレーをする方がマシだった。
「えー……めんどい」
つい思わず本音が出てしまった白夜。
しまったと思ったがしかし本音なのだから仕方がない。
ジトっと見つめてくる瑞の姿を目の端で捉えて思わず目を逸らす。
何も言わない間がちょっと気まずい。やっぱり言い過ぎたかな謝ろうか……なんて純粋にも思ってしまったからだろう。
「じゃあゲームでいいよ。今度一緒にゲームしよ」
「それならいいけど」
本来なら断っていたはずの面倒くさい約束を受け入れてしまった。
隣のお姉ちゃんはギャルの癖に面倒くさい ケチュ @Kenyon_ch
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。隣のお姉ちゃんはギャルの癖に面倒くさいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます