第3話 (side勇者) 勇者の集結
場所は王都の玉座の間。天井高くまで伸びたステンドグラスから陽光が差し込み、神々しい光が勇者たちを照らしている。だが、その明るさとは裏腹に、場の空気は張り詰めていた。
「報告によれば、魔王軍は近隣の村々を次々と占領しており、その勢力は日増しに拡大している」
国王の声は深刻だった。皺の深い顔には疲労が滲み、その視線は正面に立つ四人の勇者へと向けられている。
「にもかかわらず、未だ魅了のスキルを持つ戦士は見つかっておらぬのか…このままでは王国はおろか、大陸全体が奴らに飲み込まれてしまう。我々にはお前たち四人の力が必要だ」
中央に立つのは、金髪に青い瞳を持つ若き勇者――アルト。彼は国王の言葉を受け止め、毅然とした態度で答えた。
「陛下、どうかご安心ください。我々が必ず魅了の戦士を見つけ出し、魔王を討伐し、この世界に平和を取り戻してみせます」
その言葉には力強さがあったが、内心では焦りもあった。アルトはリーダーとしての責任を重く感じていたのだ。自分が失敗すれば、王国だけでなく仲間たちも失うかもしれない――その恐れを隠しながら、彼は気丈に振る舞った。
隣に立つのは、黒髪を肩まで垂らした美しい魔法使い――セリーナ。冷静な彼女は、王国に伝わる古い書物をもとに、魔王軍の情報を集めていた。
「魔王軍の幹部たちは、人間とは比較にならないほどの力を持っています。特にその中でも『災厄の四天王』と呼ばれる者たちは、魔王の側近として恐るべき魔力を操る存在です。無策で挑めば命を落とすだけでしょう」
彼女の言葉に、場の緊張がさらに高まる。だが、彼女は続けた。
「しかし、魅了の戦士さえ見つける事が出来れば、彼女らの力を無力化する事は可能です」
その鋭い眼差しは、玉座に座る国王だけでなく、同じ勇者たちへも向けられていた。
そんな中、槍を肩に担ぐ屈強な男――レオが静かに口を開く。
「要するに、その魅了の戦士とやらを見つければいいんだろ。まあ、俺は難しいことは得意じゃないが、戦場で敵を叩きのめすだけなら任せてくれ」
レオは頼もしげに笑いながら自信満々に言う。彼はどんな戦場でも前線に立ち、仲間たちを守る盾となる男だ。その経験から来る余裕が、場の雰囲気を少し和らげた。
最後に、猫耳をピンと立てた小柄な少女――ミナが元気よく手を挙げた。
「よーし! とにかく全部ぶっ飛ばしちゃえばいいんだよね! 魔王だろうが四天王だろうが、私たちが負けるわけないもん!」
その無邪気な発言に、国王の表情がわずかに緩んだ。彼女の天真爛漫な性格は、他の仲間たちにとっても癒しの存在だった。
だが、その場にいる誰もが知っている。魔王軍を相手にするということが、決して楽観視できる戦いではないことを――。
「では、勇者たちよ。我々の未来を託す」
国王が神聖な剣をアルトに手渡す。剣を受け取ったアルトは、一瞬だけそれを見つめた後、仲間たちに向き直った。
「行くぞ、皆。この戦いは俺たちにしかできない」
「当然だ」
「任せて」
「うん、行こう!」
勇者たちは決意を胸に、王都を後にした。その背中には、多くの期待と重圧がのしかかっている。
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