花堤
飴。
帰り道
春の嵐で雨が絶え間なく降り注ぎ、
夜桜を見て酔いが
***
ある日、妻に、今日は泊まり込みで仕事があるからと伝えて、玄関の扉を押そうと手を伸ばす。彼女は、彼を引き止めて、ある約束を申し出た。要約すれば、午後十時頃に一度連絡をしてほしいというものだった。彼はそんなことで良いのかと安心して、
気がつくと、彼は父親に手を引かれて遊技場を訪れていた。店内に充満した
「チェンジだ。チェンジ」
彼は怒鳴るように叫んだ。そして、今にも
目が覚めると、頬に痛みが走った。横には父親がいて、握り拳を目一杯に振り上げて、早く起きろと言わばかりに威圧した。彼はその
彼は珍しく地元の街を徘徊した。
その日、彼は会社で自身の作業机の前に座り、スマホの画面を見つめて、ニヤニヤとほくそ笑んでいた。すると後輩の女が、呆れた様子で彼の元へ来て、彼の机に山ほどの資料を置いた。そして、「今夜はダメですよ」と、一言添える。その内容もそうだが、初めて話すのに、どこか馴染みを感じて背筋が凍る。途端、何かに気づいた彼は、隠せない動揺に筋肉が
***
彼は懐古に身を任せて、平たく積もった夜桜の
「……いちにいさん、どうして」
突然、彼の耳に、甲高く震えた声が入り込んだ。彼は周囲を見渡そうとしたが、まだ酔いが醒めていないのか、或いは
「……にいさん、いちばんあ」
やはりよく聞き取れず、蘇る回想に紛れて幻聴が聞こえているのだろうと、彼は推測した。しかし、これを最期に、再び幻聴が耳に入ることは無かった。
気づけば、雨雲は
花堤 飴。 @Candy_3
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