日記かな

EXA.jy12 軒

僕は、恋を。

それは焼け付くような夏の日、一人がまた一人のことを忘れたいと願った物語。

教室の端と端にある距離は、まるで超えてはならない境界線で、それを踏み越えてしまって起こらせた恐怖と困惑、彼女はこの気持ちを捨てようと思っていた。


美術教室で流れている自由選曲の音楽、誰かの気付きに繋がって欲しく。

なのに、答えてくれたのはまた別の子で、それから先のことは、今でも言葉にできない体験と感覚だった。


「もう誰にも傷つけたくない」って思いながら、慎重で細心に胸の奥に隠そうとしてる。

ただ人々の中に、別に違いのない様子をふりして、彼のそばにいるだけ。

月が地球の周りに、決まった軌道(きどう)に外れずに回っているように、小心翼々で、これ以上のことには考えられない。


そのあるようでない言葉と近付き、息が詰まりそうなほどの甘ったるさと、訳の不明な意図。

たとえ警戒心を抱いても,それまでには少しでも嬉しくてたまらなくなる。


日々繰り返しのうちに、この感情も次第に酸っぱくなって、心臓にある全ての血液を搾り取って、ただ君の気を引き留めようとしているかのようだ。

そんな苦しみから逃れたくて、僕は自殺した。


それから名前を隠し、跡形(あとかた)もなく消えて、幸せで自由な生活を送りたいって。


そう思っていたんだ。


枝(えだ)に引っかかった僕を引き上げて、また同じのように訳の不明な解釈で僕を残させた。

ただ今回は、少しだけ光が見えた気がした。

ただその希望を追い付けるために残していたが、たとえこの前の道は、如何に(いかに)危険だと分かっていたとしても。


真実と誓いを捨て、ただ心の奥にある「ずっと一緒にいたい」という願いを満たすためだ。

たとえ、その結末には堪えられないほどの痛みが待っていると知っていても。


今でも愛してくれたのか分からず、「愛」という言葉に告げられて、無償(むしょう)のまま差し出し、悔いなく与えることができなくなってしまった。

幸せだと感じるその瞬間に、いつも思ってしまう──

「ダメだ、抑えなきゃ」「考えすぎちゃダメだ」って。

その感情を感じることが頂点に達した最中に、止められないほどの涙が溢れ落ちるんだ。


僕が時から君を盗んだかのように、最後の通話と返却(へんきゃく)にも、抱いてくれなかった。

いつも嫌そうな顔をして、そりゃそうだなと思っていた。

はっきりとした始まりがなかったのなら、それに応じた終わりもまた存在しないのだろう。

君が僕の最後の爆発で,はっきりとした答えを要求した時、全ての空間が塞がれ、もう何も言えずに、黙るしかなかった。


君が笑っている時、それが本当に僕に対する笑顔なのか?

傷つけられたそうな様子と口調も、僕のせいであるのか?

君が言った「愛」というものは、本当に僕だからこそであり、提供する価値じゃなかったのか?


心の奥底(おくそこ)では、あなたが僕に本当の感情を見せてくれるのなんて信じられなかったかもしれない。

それでも、どうしようもなく渇望(かつぼう)していた。


心に傷を抱えた者同士が、ただ暗闇の中で互いに灯(あかり)となり、追い求めるものとなり、安寧と平静を求め合っていたようだけだった。


けれど、その最後に残されたのは、正反対の結末と、より深い傷跡(きずあと)だった。


その日からまた一つの季節が過ぎていく、終止符(しゅうしふ)を打たれたあの時も、定(さだ)まらない気候(きこう)に止まっている。

よく暮らしていてだんだん忘れているようでも、色んな記憶の欠片(かけら)を呼び起こされる情景に触れるたびに、胸が砕け散ったガラスにグサッときて、痛くて痛んでる。ブラックホールのような傷が全てを吸い込まれるように、息ができなくなっている。


交わる(まじわる)ことなんて一度も思わなかった人が、最後には僕の心に言葉にできないほどの感情を残していて、まさに僕の一部になってしまった。

その人を愛するということが、まるで息がするように自然で、当たり前のようになっている。


道徳心(どうとくしん)に突き動かされるまま、何度も「ごめんなさい」と繰り返した。

君ががタダでもらえる好意(こうい)を断れない性分(しょうぶん)をいいことに、その弱さを利用して、自分勝手な夢に浸っていた。

調子に乗って、つけ上がって──

他人から見れば、これが僕の「当然の報い(むくい)」だったのかもしれない。



何年もの365日(さんびゃくろくじゅうごにち)を共に過ごせると思っていたのに、君への想いさえ、あの日の輪廻を迎える前に、僕たちの終わりと共に沈んでいた。


他人の挨拶やからかいに、「そういう関係じゃない。」って言えたらよかったのに、ただ立ち尽くして、何も答えずにいた。


君には──どうか、本当みたいな幻覚を抱かせるような言葉を言わないで欲しかった。


また巡り合い、仲直りし、心を許し合えるのなら、どれほど良いのことだろう。

昔のように、また互いに安らげる(やすらげる)新たな命を紡ぎたい(つむぎたい)だけだ。


君のその何故かの分からない、遠くの穴の中に一筋(すじ)の光が漏れているのを感じている。

それは何かを暗示(あんじ)してるだろうか、何かの証(あかし)なのだろうか?


不健康で波乱に満ちている、それでもまた心の奥にその最良の未来を信じている。


そこにまた歩めるチャンスはあるかい? 心にはまだ感じでいる繋がりは真実であるのか? 君もまだ遠い何処かで何かを待っているのか?


もう一度、信じてくれますか?

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