コンビニ前で助けた同級生の自称妹に「姉と友だちになって」と言われたが、これが中々難しい。
芝蜜柑
プロローグ
昔から、それこそ幼稚園の頃から、英雄とかヒーローとかが好きだった。父親が小説家だから、家には漫画とか小説とか図鑑とか、色々な本があって、当時からその本たちを読んでいた。もちろん父親の作品も読んでいた。
文字はふりがながあったから読めたし、意味が分からない文字は雰囲気で解釈していた。内容が難しい作品も合って、小さい頃は分からなかったけど、中学2年になる頃には分かるようになった。
そんな中で、特に主人公が人を助ける物語、いわゆる王道の話にハマった。主人公が誰かを助けた後に、そこに笑顔があるのが好きだった。逆に、救えなくて、そこに絶望があるのが嫌いだった。今も昔もそうだけど、全員が笑っての大団円が一番だと思ってる。
僕はそんな王道の主人公たちに憧れた。その憧れは、年齢が上がるにつれて薄れていく、なんて事はなく、今も残っている。
けど、あの時期から僕は進めないでいる。体は大きくなったし、憧憬のようになりたいという願望を持って鍛えてもいる。
しかし、それは表面的な進歩で、心はいつまでも
悲しくて、恐れて、線を引いて、鎖でつながれている。
―――――
春の木漏れ日のような暖かな家が好きだった。毎日必ず「おはよう」と言って一日が始まって、「おやすみ」で一日を終える。毎日三人で机を囲んで晩御飯を食べて、一日の出来事を話したり、テレビを見て笑ったりする。休日には家族で公園に行って遊ぶ。年に一回テーマパークに連れて行ってもらう。他には、他には、他には……
数えきれないほど幸せがあった。毎日笑顔が絶えなくて、楽しくて。私は断言できる。私の家族は世界で一番幸せな家族だったと。
けれど、あの時から進めないでいる。私は体は成長したし、頭も他人と雲泥の差ができるほど良くなった。
しかし、それは表面的な進歩で、心はいつまでも
悲しくて、恐れて、諦めて、鎖で繋がれている。
―――――
私は彼女のために産まれた。彼女は私にとって一番大切なものだ。何よりも優先するべきものだ。だから、積み重なった問題を解決しようと頑張った。時には話を聞いて、時には私が表に立って、負担を肩代わりして。
でも、根本的な解決なんてできなかった。無為な時間が流れていく。停滞した時間が積み重なる。いつしか奥底では諦念が芽生えていた。
私はスタートラインから進めないでいる。したことといえば、苦痛の先延ばしと継続。ただの延命処置。
焦って、もがいて、諦めて、鎖で繋がれている。
―――――
だから、僕/私たちにとって、あの日の出会いは正に運命で、岐路で、回帰だ。鎖を断ち切り、想いを取り戻して、
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