残したかったもの
実家の取り壊し前に、私は写真を撮っていた。
傷だらけの玄関、黄ばんだ壁、使い込まれたキッチンを撮った後、においのするほうへ歩く。畳のにおいだ。両親が寝室に使っていた和室。畳は傷み、障子も破れてボロボロだ。それでも窓から差し込む光で輝き、あの頃を思い出させる。
残せなくてごめんね。
※「第7回140字小説コンテスト はのコン feat.蒔狐」に応募しました。テーマ「和」。
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