幽霊じゃない

ツヨシ

第1話

近所に数年前に廃業した廃病院があるが、いつの間にか心霊スポットとなっていた。

ネットを中心にそれなりに有名なようだ。

だが廃病院、そして心霊スポットというワード。

全国にいくつあるやら。

あまりにもありきたりすぎる。

そんなわけで俺の家から徒歩数分だが、廃業してから俺は行ったことがなかった。

そんな時、会社の先輩がその噂を聞きつけた。

「おまえの近所なんだろう。案内してくれや」

断るとあとがいろいろと面倒くさいことになる先輩だ。

俺は断れなかった。

週末の夜、待ち合わせた先輩と一緒に廃病院に向かった。

開業しているときは何回か行ったところだ。

俺に恐怖心はなかった。

恐怖心はないが、興味もまったくなかったのだが。

「すごいところだな」

確かに初見ではそう感じるであろう外観かもしれない。

でも昔を知っている俺は、何も感じなかった。

「入ろうぜ。先に行け」

中に入る。

懐中電灯の照らす先は、まさに心霊スポットと言っていい雰囲気だ。

荒れ果てている。

しかしいくら廃病院とはいえ、こんなにも雑然と荒れてしていいものなのか。

俺はなんだか不自然さを覚えたほどだ。

ここに来た連中が散らかしたのかもしれない。

見れば壁にスプレーで、いくつか落書きが書かれている。

礼儀をわきまえない連中がいるようだ。

俺は幽霊よりも、そんな連中に出くわすことのほうが怖かった。

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