史家仮名太の夢の話
史家仮名太
史家仮名太の夢の話「広瀬すずと不思議な午後」
雨の中、裏山の犬
雨の音が窓を叩く中、自宅の裏山から犬の吠え声が響き渡る。あまりにも耳障りなその声に、私は思わず「北斗」と名前を呼んでみた。普段は忠実な番犬だが、今日は何かがおかしい。北斗は私の声に応えることなく、見知らぬ犬を追いかけていた。
「番犬も頑張ってるな」と感心しながらも、雨戸を閉めようとしたその瞬間、窓の外に牛の姿が見えた。雨の中、じっとこちらを見つめるその牛。
「野良牛か?」とつぶやきながら、私は台所にいる妻に声をかけた。「牛がいるから何かあげたいんだけど」と言うと、妻は面白がりながら食材で余ったリンゴの芯をくれた。それを4分の1にカットして再び雨戸を開けると、牛はすでにその場にいなかった。
辺りを見渡すと、隣の家の裏にひとりの男が隠れているのが見えた。
「おい、何してるんだ?」
不審に思い、大声で叫ぶと、その男はビクッと体を震わせ、木の陰に隠れようとした。しかし、その叫び声に隣の家の子供が驚いて窓を開け、こちらを見ている。私は必死にゼスチャーで「誰かいるぞ!」と知らせると、子供はしばらく考え込み、何かを思いついたのか部屋の奥へと消えていった。
隣人と警察の登場
数分後、隣の住人が2人現れて、1人の男を捕まえているのが見えた。しかし、もう1人は逃げてしまった。私はその場を見逃すわけにはいかず、後先を考えずに襖を開け、窓を開けて外へ飛び出した。
そこに立っていたのは、ボロボロの緑色のジャージを着たひ弱そうな男。明らかに危険な雰囲気を感じ、私は警戒しながらも問いかけた。「捕まえられるかな?」と。
男がポケットに手を忍ばせる動きに、私は思わず警戒した。「ナイフを持っているのか?」と思いながらも、男が取り出したのは意外にも櫛だった。
格闘の始まり
男が虚を突いて逃げようとした瞬間、私は反射的に腕を掴んだ。柔道部だった私の得意技を使おうと、「内股」で相手の足を引っ掛けて投げようと試みたが、得意技ではないため、男は回転しながら倒れず、逆に勢い余って回転した。
「これはダメだ!」と冷静に思い直し、「体落し」に切り替えた。男の足の前に私の足を出すと、見事に男は倒れた。その瞬間、「総一郎君!」と隣の住人に捕まえたと何度も叫んでアピールしたが、返事はない。
男が逃げようとしたその時、私は脇腹に2発の拳を叩き込み、男はその場で静かになった。ちょうどその頃、隣の住人と警察が到着し、男を引き渡すことができた。
犬とご飯
戦いが終わり、私は家に戻ろうとした。すると、「北斗」が見知らぬ犬を連れて帰ってきた。犬は「ご飯をくれ」とせがんでいる。戦いでお腹が空いた私は家に入ると、妻に「ご飯は?」と聞いた。
「カレーライスとカレーうどんよ」と妻が答えた。その瞬間、私は固まった。妻が、なんと「広瀬すず」になっているではないか。
夢か現実か
私は驚き、言葉を失った。見とれていると、広瀬すずが私に声をかける。「何固まっているの?」と。そして、カレーライスとカレーうどんをテーブルに並べてくれた。
食べる準備をしていると、広瀬すずが「食べるの?」と聞いてきたので、「食べるよ」と答えると、彼女の顔が少しむくれてしまう。「何?」と思いながらも、広瀬すずはスプーンを取り上げ、「あーん」としてくる。
私は口を開け、広瀬すずにカレーライスを食べさせてもらうと、彼女は笑顔で「かっこいい」と言い、私に抱きついてきた。その瞬間、私は驚きながらも自慢げに先ほどの武勇伝を話していた。
「もう一匹犬を飼おうか?」と私は提案する。北斗が連れてきた犬を思い出し、ふと口にしてしまったその言葉に、広瀬すずは真顔で答える。
「庭に虎とワニがいるけど、大丈夫?」と。
その瞬間、私の目が覚めた。
夢の終わり
全ては夢だったのだろうか。それとも現実の一部だったのか。裏山で吠える犬、謎の男、そして広瀬すずとの奇妙なやり取り。「カレーの味わい」も「広瀬すずの笑顔」も夢の中での「甘い思い出」として日常と非現実が交錯し、私は目を覚ました。
■ 夢の解析
この夢は以下のような要素に分けて読み解けます:
1. 日常からの逸脱欲求
裏山の犬、雨、野良牛、不審者など、最初は現実的な状況ですが、徐々に「現実の枠」が崩れていきます。これは、日常に潜む異常への好奇心や、非日常に巻き込まれたい欲望の表れかもしれません。
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2. 自己のヒーロー願望
不審者との格闘、武勇伝としての誇張、「隣人と警察が来るまで自分で対処」する展開。これらは、自分を守れる存在でありたいという自己価値の肯定やヒーロー願望の象徴です。
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3. 理想と現実の混濁
広瀬すずとの食事シーンは、疲れた心が求める癒しと理想の象徴。しかも「カレーライスとカレーうどん」という、子どもっぽさと満足感の融合が現実味を持たせています。
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4. 潜在的な不安
最後の「虎とワニ」のセリフで、夢の中の理想空間が一気に不穏になる。これは、どれだけ幸せに見えても、心の奥にある不安や恐れが完全には消えないことを表しています。
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