指輪編
プロポーズの一歩手前をした翌週に僕は愛ちゃんと、指輪を選びに来た。
まずハリーウインストンに入ったけど、すぐに愛ちゃんは店を出た。
「高すぎだよぉー!こんなん無くしたらどうしようって不安になって毎日守るのがしんどくなるからやめとこーよ」
と、プレッシャーになるらしいので、カルティエに入った。
「ごめん…宏、出よ」
どうやらここも、高くてしんどいらしい。
ブルガリもティファニーも同じ理由で愛ちゃんは選ばなかった。
僕はもう40代な訳だから、逆にここぞと言う時にはちゃんとお金を使いたいんだけどな。
「あ!あそこがいい!」
愛ちゃんが指さしたのは、高島屋の中にあるジルスチュアート。
主に服を売ってるところだけど、指輪もあるらしい。
値段を見て本当にこんな安くていいの?と拍子抜けしてしまう。
「ジルすきなの!可愛いー!」
と満足そうに笑うから、2人分買って結婚指輪にした。
毎日つけるものだから、もっと高くていいのに…。
まあでも婚約指輪を渡してないわけだから、そこを勝手に僕が選べばいいか。
指輪じゃなくてもアクセサリーなんていっぱいあるわけだし、ゆっくり考えよう。
ただ、まさか何を欲しがっているかを意外な子に教えてもらうことになるとはこの時の僕は知らなかった。
この日は2人で食事をして、愛ちゃんを車で家まで送った。
愛ちゃんは薬指にはめた指輪に何度も頬擦りして嬉しい嬉しいと言っていた。
車から出る時、愛ちゃんは
「はいっこれ」
と言ってピンク色の封筒を渡してきた。
シールが不器用にいろんな箇所に貼られていて
”ままのすきなひとへ”
と宛名に書かれていた。
「えっ?娘ちゃんから僕に?」
愛ちゃんはニコニコ頷いた。
「家に帰ってから読んであげて!」
「わかった。ありがとう。」
「こちらこそ、今日は指輪ありがとう!一生大事にするね!」
助手席のドアを閉めると、愛ちゃんはマンションの階段を軽い足取りで駆け登って自分の家へと戻っていった。
僕はその姿を封筒を持ったまま眺めていた。
指先がなんだか居心地が悪い。
むず痒いというか…。
胸がくすぐられるような、不思議な気持ちになる贈り物だった。
********指輪編終わり********
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます