一度読み終えた後、また改めて読み返したくなる作品でした。
なんと言っても、仕掛けとなっている「視点」の扱い方がとても面白い。
主人公の美樹はアイドルグループの一員として、最近は色々なことがうまく行っている。
本作は「二人称」の視点が取られており、美樹に対して「あなた」と呼びかける何者かが存在している。
この視点の主は一体誰なのか?
ポイントとなるのは美樹が語る話。「最近は布団を変えたので良く寝られている」という話。
そして、「良い夢」が見られ、美樹はその中で別の人生を歩んでいる。
面白いのは、この「二人称」の視点がある瞬間に「変化」を遂げること。
最初に読んだ段階ではうっかりと見逃してしまうかもしれない。でも、実はサブタイトルに「あなたと君」とあるように、二人称視点の呼びかけが「あなた」と「君」と二種類あることに気付かされます。
そして最後まで読んだところで、ハッと見えてくるもの。
この視点主人公として「あなた」や「君」と呼びかける存在。この存在そのものに関して、実は大きな仕掛けがあるということ。
本作で使われているのは、いわゆる「〇〇トリック」の新しいパターンと呼んでいいものかもしれません。
二人称の小説視点は数自体が少なく、まだまだ開拓しきられていない分野かもしれない。だからこそ、その視点を使った手法では他にも色々とやれることがあるかもしれない。
そんな小説としての可能性も感じさせてくれる一作でした。