そんな仲ではないのですけど、まだ

大星雲進次郎

そんな仲ではないのですけど、まだ

 昨夜ネットで面白いものを見た。

「天下無双」「ダンス」「布団」でなんかお話を作れって。

 私の中では一瞬で大河並のドラマが完成したが、締め切りまでには間に合わなさそう。900文字以上?う~ん、これは先輩レベルだな。

「と言うことで、お願いします、先輩、オハヨゴザース」

「おはよう……最近、心の中のディスりにも遠慮なくなってきたな」

 誉めてるんですけど?

 むしろ先輩にもっと構ってほしいという愛なんですけど?

「まあ、繋げればいいんだろ?『布団の中でダンスをさせれば俺は天下無双だ』みたいな」

 先輩のレベルを見誤っていたわ。せめて100文字はいってよ。どうしてその程度でニヤリと微笑むことが出来るの?

 それに、

「先輩?布団でダンスなんて、お行儀悪いですよ?」

 ホントお育ちがお悪いです事。でも好き。

「ダンスってのは例えで、その、アレすることだな、アレ。男女でイチャイチャしたり」

「あ……」

 セルフレーティングっ!

 さすが男の人は野獣ですわ!TPOもあったもんじゃないじゃない!でも先輩が望むなら、私も望むところではある。

「あ……その、私初めてなので、そんな天下無双とかされても……。あ、課長!私達早退……」

 始業前だけどカード通しちゃったからね~

「マジで受け取るなよ。お前が出したお題だろ?」

「優しくしてもらえると……」

「ねぇ聞いてる?言葉遊び、ね」

「でも先輩、先輩の経歴でそこまで親しくなった女性はいなかったはず。どこで練習を?」

 むしろ私と同じ未経験疑惑まである。

「だから俺の事じゃなくてな?……何で俺の経歴知ってるの?」

「高校のご友人達からは、結婚式には呼べよと言われました。その時は取材段階だったので確約できず申し訳ない思いでした。高校生の頃はまだそういった対象はいなかったとの証言も。次に大学時代……」

「……コワい」

 プルプル震えだす先輩。荒ぶったヘラジカみたいで可愛いですよ……生まれたての小鹿だったか。

「先輩、変な見栄を張らなくても……正直な先輩、私好きですよ?」

 こんなトコロかな?

 見直し入れたら、規定の文字数超えてるんじゃないかしら。

「布団は?布団の掘り下げが甘いと思う」

 むこうの島からよく通るダンディボイスが飛んできた。

 さすが課長!さすが承認までの最大の関門!さすがチェックが厳しい。いつもすいません!

「そうそう。布団はどうせ蹴っ飛ばすから、軽くてペラペラで良いんですって!」

 なけなしの知識を披露する私。

 え?それだと朝が寒いの?

 みんな物知りなのねェ。

 え?横に暖かいのがいるから、それでまた?

 みんな無双なのねェ。

「先輩、いつまで震えているんですか?」

「コワいコワいコワい……」

「もう、冗談に決まってるじゃないですか」

 ヤバい。過去話が危険なトラウマに抵触しちゃったらしい。顔色も悪いし……。本当に調べて聞きに行ったとネタばらししたかったんだけどダメだな。 

「ほんとに寒いんですか?だったら私、お布団になりましょうか?ギュッてしましょうか?」

 もちろんそんな度胸なんて、私にはないのだけれど。

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