私の一番見たい夢

スロ男

殺す夢


 あの夢を見たのは、これで9回目だった。

 何かを殺す夢。

 最初に手をかけたのは、父親だった。食卓に酔い潰れた父の、椅子の脚を払い、床に突っ伏したのを蹴って転がし、体重をかけて首を絞めた。骨の存在を感じる。目が覚めてジタバタとするのを脚と重みで押さえ込みながら、さらに力を加える。見開いた充血した目が半分飛び出している。喘いで酸素を求めて開いた口を、やけに長い舌が邪魔して、さらに舌は這い出てきた。

 ところで私と父の仲は良好である。○○ちゃんのパパって素敵、とかつて同級生からあこがれられたぐらいにはダンディだし、不満もない。

 父は生きている。

 2回目に殺したのは、兄。踏み殺した。兄は全裸で、格子状に赤と青に塗り分けられていて、つまりダンスマットなのだった。私は笑いながらテレビの指示に従い、赤腕、青腹、赤顔、青股間と跳ねて、踏みつけた。特に股間を踏みつけたときには「きゅうっ」という聞いたことのないような音を出して、兄は静かになり踊りやすかった。

 兄は生きている。

 3回目は、よく知らない侍。侍なのだろうと思う。丁髷ちょんまげだったので。天下無双がどうとかうるさかったから、口に切り取った丁髷を入れて、鼻には揉むと柔らかくなる耳栓を入れて布ガムテープで塞いだ。元々、後ろ手に回された指は結束バンドで固定されていたし、足はラップか何かでぐるぐる巻きにされて床に転がっていたのだ。

 侍も生きている。

 いまは楽しそうにひな祭りの飾り付けをしている。端午の節句がいまから思いやられる。

 4回目は妖精で、5回目は布団だった。妖精は鍋で煮た。勿論、生きている。布団は月並みだが刃物でズタズタにした。これまた生きている。

 妖精はお内裏様が気に入ったらしく、その上にちょこんと座って、ひなまつりの歌を唄っている。布団は私を温かく包み込みながら、子守唄を歌っている。

 6回目はゾンビで7回目は巨大ロボだった。

 ゾンビは家を徘徊しているが、巨大ロボはわからない。おそらく家の外にいるのだと思う。8回目は私自身で、今朝見たのは名状し難き何かだった。

 どんどん家族が増えて、とても楽しい。

 私は布団の中で、私と顔を見合わせ、ね、と微笑む。

 早くお母さんの夢が見たい。

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私の一番見たい夢 スロ男 @SSSS_Slotman

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