平凡彼氏と私と弁当
第1話
あと二か月もすれば、付き合って一年の記念日になる。
付き合って一年となると、季節ごとにそれぞれ初めての経験をして、山あり谷ありで、ようやく落ち着こうというときなのではなかろうか。
壁を乗り越えた自らを称賛し、労わるのが一周年というものではなかろうか。
これからも、お互いよろしくねという区切りの日なのではなかろうか。
「間保、今日も顔、疲れてっぞ」
お待ちかねの昼休みのチャイムが鳴ったのにも関わらず、疲れ切ったあたしに弥穂ちゃんが顔の前で手を振った。
弥穂ちゃんは男勝りでサバサバしていて、師匠むしろダーリンと呼びたいくらいかっこいい。
男の子ならきっとモテモテだっただろう真摯さ。
「あれ?今日もって何?もって」
あたしそんなに毎日つまらなさそうな顔してるのか?
「そんな疲れてるなら保健室行くか?」
弥穂ちゃんは胸元まで伸びた髪を後ろで一つに束ね、それを揺らして彼女はあたしの顔を不意に覗き込んだ。
そういう仕草をもし男性にやられたら、たぶんひとたまりもないと思う。
「いや、違うの」
「どうした?」
あたしの机の前に立った弥穂ちゃんの後ろから背の高い学ラン姿の男が顔を出した。
「凌くん!」
あたしが名前を呼ぶと、やわらかく笑った。
あたしの声に弥穂ちゃんも振り向く。
「凌!」
凌くんはクラスメイトであり、弥穂ちゃんの彼氏さんだ。
男っぽい弥穂ちゃんだけど、凌君といるときは乙女になる。
そこがまたかわいいんだけど。
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