本作は奇妙な認識の錯誤を描いた物語です。
物語の発端は、主人公が手にした日記。
亡くなった姉が自身の夢を記した記録だと提示されます。
そこに記された〝あの夢を見たのは、これで9回目だった〟という一文に用いられた〝こそあど言葉〟に〝遠さと近さ〟の不自然な混在があると主人公は言うのです。
この発言が読む者に不信と疑念と不安を与えます。最初の確かな違和感です。
そして物語は不穏な雰囲気のまま終盤を迎え、そして────いままで見えていたものが反転します。
そして語り手である主人公にも疑念が湧くのです。
この人の認識は正しいのか?
きっと、そう思われる事でしょう。
作中に、度々現れる〝九〟という数。
その一致と反復には、何か良くないことがまだ継続している。
そんな気味の悪さを感じさせます。
入れ子構造の続く不気味さと、終わりのなさがまさに悪夢のような物語。
ときには迷ってみるのもわ楽しいものです。
ご一読をお勧めします。